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「イルーナ君」
カインの手に小瓶を渡す
「これは解毒剤、もしも毒とか飲んでしまった時の為にお願いします……その代わり用事が済んだら直ぐに此方に帰えして下さい……僕にもチャンスを下さい、コイお姉さん」
カインから視線を移動させて私を見て頬笑むイルーナ君
チャンスって?
それってシークみたいな口説きをするの?
イルーナ君が?
結構簡単にサラッと言われたけど?
「イルーナ君……」
「もうっ!もっと強引に言えないの!全く!だらしない!」
サーシャちゃんは怒ってるけど私はドキドキしてますから…ギャップじゃないけど普段紳士なイルーナ君だもん…充分ギャップ萌えだ
「…面倒が増えた。ほら、行くぞ」
「ちょっとっ!」
引っ張られる様に家を出ていつもの馬小屋…じゃなかった倉庫に連れて行かれる
そして直ぐにまたメルヘン乗りだ
ここまで私の意見なんて全く無視なんですけど!?
「ちょっとまだ岡本さん達に挨拶もしてないのに!」
「そんなのいつでも出来るだろ?…この世界に居れば」
そんな当たり前みたい言わないでよ
「それに何処に行くのよ!それくらい教えないさいよ!…嫌い要素が増えるわよ」
こっちだって黙って良き妻宜しく3歩下がって後ろを着いてくタイプじゃない
その前に妻では無いけ ど。
無理と知って梨子的な発言を真似てみるとカインの動きが止まる
え?
マジで?
「…それは困る」
「あの…」
確かに行き先を知らないのは困る。
アリス王子って言葉だけじゃ物語がおかしいもん
でも本当に聞いてくれるなんて…本当に私の事なんか好きなんだ…
「アリス王子、シンデレラって女の伴侶となる筈だった男の城だ」
「えぇ!?」
「答えたから行くぞっ」
そう言うとまた馬を走らせ始めて私は必然的にカインの胸の中に納まる
アリス王子ってシンデレラの王子様?
じゃあ不思議の国のアリスのアリスちゃんとは別人なの?
それよりそんな名前だったっけ?
…でもシンデレラの王子様って昔から覚えてだけど本名なんて知らなかったわ
カインもそうだけどお伽の国の主役はお姫様がヒロインの話が多い
王子の名前なんて書いて無いのが普通。
シンデレラの王子様
私が恋い焦がれまくった王子様
でも今は…
「………」
チラッとカインの顔をみるといつもより何だか表情が硬い
それになんで積極的に私をアリス王子に会わそうとするのかな?
私を好きだったら会わせたくないのが本能だと思うけど…
カインの胸元にはイルーナ君が渡した小さな小瓶がある。
これは解毒剤だけど、また毒を口に入れる事になるのか…私は今度 はどうやって戻るんだろう?