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半年前の事だけど、あんなにイルーナ君が注意してくれたのに…
でも……なぜかフラッとあのお婆さんのリンゴを食べてしまった
「無事だったから良いです、これからは気を付けて下さいね?」
「うん……ん?」
起き上がろうとした私はお腹の辺りに重みを感じて目線を落とすと、そこには寝てるニーチェが居た
顔が見えなくてもピンクの服で直ぐにわかる
「あぁ……ずっと心配でコイお姉さんの傍を離れなかったんですよ」
「ニーチェ、ずっとお姉さんの手を握って泣いてたから…そのまま寝ちゃったのね」
ニーチェ……
「皆心配して、代わりながら看病してたんですよ、ニーチェはずっとだけど」
ヤバイ…泣きそう。
ずっとって言っても半年間じゃないけど……こんなに心配されてたって知ると凄く嬉しいけど複雑だ
私は何故、半年も来れなかったのか
そして、こっちの世界は時間が経ってないって事
まだ半年だから良いけど…数年とか考えると怖いかも。
「コイお姉さん、何か食べれる?」
「え?」
「1日寝てたんだもの、お腹空いてるんじゃない?簡単な物なら私作るわ」
「サーシャちゃん……有り難う」
気持ち悪いけど『食べ物』と言われたら何だかお腹が空いてきた。
昨日の夜はお腹いっぱい食べたのに……
「あの、イルーナ君お願いが……」
サーシャちゃんが居なくなった部屋には私とイルーナ君だけになった
ニーチェもいるけど寝てるからカウントしない
「何ですか?」
「鏡……取ってくれる?」
「鏡?」
木目のタンスの上の鏡を指差すとイルーナ君も同じく指差す
「うん」
「ちょっと待ってて下さいね……はい、これ」
「有り難う」
「僕は席を外しますね、何か用事が有ったら呼んで下さい」
「…………」
理由も聞かず鏡を持ってきてくれた彼は私に渡すと寝室を出て行った
やっぱり……イルーナ君らしい
きっと用事なんて無いだろうに女性が鏡を見たいと言ったら席を外すなんて紳士的
化粧直しをするわけじゃないけど無神経な男とはやっぱり違う
子供なのに……子供らしくないなぁ
「……ニーチェは子供らしいけど」
私の横に座りながら寝てるニーチェの頭を撫で渡された鏡で自分を確認する