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私の悲鳴なんて無視するように重い城門が開くとカインは馬を走らせる
目の前の景色はメルヘン大好きには堪らない光景が広がってるが今の私には庭園を楽しむ余裕が無い
只でさえ街の人には顔バレしてるし、やっぱり聖女だとか救世主とか言われちゃってるし
その上王妃と面会って……現代で言う『親と会ってくれ』と言うプロポーズ的なアトラクションじゃない!
そんなアトラクション……ハードル高すぎるんですけど!
「ほら、降りろよ?」
「…………」
当たり前の様に差し出された手を取って私は地面に降りてカインに着いていく
その脇には中世ヨーロッパの鎧的な物を身に付けてる人を居るけどカインに話し掛けてる人は年若い感じで何だか位が高そうな服装としか表現出来ない格好をしてて
本当に絵本や童話で見たような服装やお城に本当なら歓喜したい!
歩いてる赤い絨毯に頬をスリスリしたい!ドレーブ掛かったカーテンの中に潜ってクルクル回りたい
まだドレスを着た人は見えないけどメイドみたいな服装の人の服を触りたいよぅ!
でも何度も思うが今の私にはそんな余裕は無い
「それで?そのお嬢さんが運命の姫?」
「そう、俺的に……だけど余り触れるな、まだ完全に俺に惚れてないんだから」
「運命の姫なのに?」
「そんなの知らない、俺はコイツが好きになったからコイツ以外考えられない、予言とかもうどうでも良い」
「おいおいどうでも良いって…国の為にと言うか兄の為に姫を探しに行ったと思ったら…へぇ……あのカインが惚れた……そりゃ面白い!」
「…………」
聞きたくなくても耳に入ってくる会話に参加もしたくなくて俯いてると、そのカインと親しい人ッポイ人が私の顔を覗き混む
「綺麗なお姫様だ……特に艶ややかな黒髪が良いね……その綺麗な顔を引き立ててる。カインが惚れ込むのも解るな」
「おい、勝手に触るなよ!」
これまた美形だけど、何だろう髪が長いせいなのか凄く色気を感じる。しかもなんか良い匂いが……絶対恋愛は百戦錬磨って顔と態度
私に触れようとしたけどカインに止められて笑ってる
「こりゃ面白い!カインが執着してるなんて……しかも女性に……取り合えず初めまして。俺はリュクエ、カインとは親戚みたいな者」
「はぁ……初め……」
「手なんか触れなくて良い、穢れる」
差し出された手に手を出そうとするとリュクエと言う人の手を払い除けるカイン
私の出した手は行き場が無くなりそっとしまう
穢れるって……確かに良い匂いだけどその匂いが付くのはなんか嫌だから今のはナイスだ、カイン。
「…相変わらず可愛くないなぁ」