表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/280

98『長い彗星の夜に……』

「……信長様、信長様」


……誰かが呼んでいる。


しかしその呼ばれた者は、恍惚の表情で、ずっと長く尾を引く彗星を眺めながら……思案している。


……あれは……


……遥か西方の三賢者が、私に会いに来たということ……か。


「信長様!」


大きな声て呼ばれたので、まだ思案の中で答えた。

「……あなたは、私に会いに来たのですか?」

……なぜか“ですます”調のその者。


「は……はいそうです」

フロイスは、信長の突然の変な話し方、変な質問に首を傾けながらも返事をした。

(信長が、話があるから早く来いと言うから来たのだが……)


「……やはり、そうでしたか。私に会いに来たのですね」


……あの時と同じですね、あの時、東方の三賢者が……


……私に会いに来た時と。


……あの時も、彗星がずっと夜空を照らしていましたね。


――彗星を見てまだボ~としているその者を見て……

「信長様、もう用件が無ければ、帰る準備をせて頂きますよ!」

といって、持ってきた聖書等を片付け始めるフロイス。


「帰る……そうか、もう“天に”帰る時が来たということか……」

「いえ帰るのは“天主”じゃないですよ!ここが天主です!

帰るのは教会です。きょうかいに帰ります!」

今日の信長の変な対応に、少しキレ気味で大声を出すフロイス!


「で……であるか、ご苦労であったフロイスよ」

いきなりの大声で、ようやく我に返った信長であった。


――帰って行くフロイスを見送りもせず、また夜空を眺める信長。

織田信長は、彗星を見ながら今一番関心があるイエスのことを考えている、イエスのことを思っている内に……

そう私たち読者が、登場人物の気持ちになってしまうように感情移入して、ついイエスの気持ちになっていたのであった。


……そうか、イエスが生まれた時、東方三賢者がやって来たである。


……そして……


……彗星は、神が生まれた印であった……。


ということは、余の生誕の年に世界の西の果てで、結成された、神を崇める宗教団体が、その三賢者が遙々余に会いに来た――

そしてようやく、余に出逢った。

そして、この彗星……


……彗星は、神が生まれた印……


イエスは自ら十字架にかけられ、死した後に神、

――そうキリストとなった。


それを三賢者が、いやこの彗星そのものも……

余に知らせに来たのかも知れぬな。


ようやく、この余による、

そうこの『織田信長による福音書』を――

そう、エヴァンゲリオン計画の実行の時であると――!


あるいは……彗星が、


……私を天に向かえに来たのかも知れませんね。



……またイエス気分になっていた信長は、口癖の“である”調を忘れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ