77『第六階』
○安土城天主《第六階》
襖を開けると――
そこには、その天井には、天人・天女たちが描かれていた。
そして、その描かれた“天井画”には全ての背景に――
金箔がおしてあるのだ。
……いや違う、周りを見渡せば一目瞭然――
天井どころか、襖という襖、壁という壁全てに金箔が貼られ――
この部屋全体が“黄金の輝き”に満ち満ちている。
……こんな輝ける場所がかつてあっただろうか――?!
「こ、ここは…………エデン……」
と拙者がつい声を出してしまった、
この安土城天主第六階の《黄金の間》は、
現在復元され滋賀県の『安土城天主 信長の館』に展示してあります。
後に信長の後継者である豊臣秀吉が、
《黄金の茶室》を作った事を考えると――
信長と秀吉との“強い絆”と“熱き想い”を感じる。
そうこの部屋は、天下布武という、戦争根絶そして恒久平和という――地上の《楽園》到来への象徴なのだ!
安土城天主は、そう仏陀の階の上に、もう一回上階があり、
つまりは、仏陀より上の存在を意味する配置となっているのだ。
そして黄金に輝く部屋の中央に座すは――
天主の主であり、黄金の輝きをまといし織田信長なのである。
ちなみに、
天主第四階が何故、なにも絵か描かれてないかを考えると、
そうこの天主の各階に描かれし絵や設置物をもとに考えると、
この天主の《設計理念》がよく解るのである。
おさらいになりますが、
《地下一階》
・多宝塔……仏教。
《一階》
・影向石……仏教。
《二階》
・襖に孔子などの中国古代の賢人の絵……儒教。
・襖に仙人の絵………道教。
《三階》
・鳳凰の絵……古代中国の伝説・中華思想。
・『許由と巣父』が描かれた間。古代中国の聖人の方々である。
《四階》は、一旦飛ばして――
《五階》
・釈迦の絵………仏教。
《天主構造》
・吹き抜け構造……キリスト教。
しかも、一説には、天主の屋根に正に教会建築の様に、巨大な十字架が乗っていたという話すらある。
とすれば、自ずと四階が何故に絵が描かれてないか……
いや何を意味するのか、そう何をテーマとしているのか、想像できますよね!
――そう、神道です!
神道の神は――森羅万象の総てにいる。
が、故に突出した神というものは何処にもいない。
家の神がいれば、箸の神、トイレの神、山の神……八百万の神は総てに存在するが故に、簡単にいうと目立たない。
だからこの四階は、神や思想をモチーフとする絵か描かれてなかったのだ。
――と、拙者は考えるのである。
そしてそうなると、どうなるかというと――
この天主には、この日本にある主な宗教、
そう信長が知り得る総ての宗教――
つまり、仏教・儒教・道教・中華思想・キリスト教そして神道の総てを網羅していることになるのだ。
しかも、織田信長はこの黄金の部屋、つまり天主最上階で寝起きしているのだ。
つまり信長は、総ての神の言わば、《守護神》として、
つまり総ての神を守る、ただしその宗教が武装して争わなければ。
という宗教の平等を保護・監督する者、そう超越者になったのです。
そしてその神を超えた存在になった信長を裏付けるものが、
――実はなんとこの安土城の城内にあったのである。
そしてそれはなんと……
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