50『信長、最期のキス?』
織田信長の最期は、
信長の一代記『信長公記』によるとーー
光秀に本能寺を攻められた時、
信長は最初、外が騒がしいのは誰か喧嘩しているのかと思っていた。
そうしたら、銃声が聞こえたのでーー
何者かに襲撃されたとわかり、
「さては謀反か、誰の仕業か」と問いただすと、
小姓の森蘭丸が、
「明智の軍勢と思われます」と答えた。
信長は最後に、
「是非に及ばす」と一言いった。
これが、冒頭でも述べた有名な信長最期の言葉ーー
「是非に及ばす」に到った流れですが、
信長もイエスと同じくーー
迫り来る死に対して慌てず受け止め、全く落ち込むとか動揺するとかいう感じはありません。
また、スペイン商人アビラ・ヒロンの『日本王国記』には、
信長が最後の時もーー
「唇に手を当てて、余自ら死を招いた」
と述べたという記述もあり、やはり落ち着いている様子が伺えます。
ーーところで少し閑話休題ですが、
前述のように、ユダは憲兵にイエスを売り渡す時、誰がイエスかを教える合図としてーー
イエスに口付けしました。
愛の行為であるキスで、裏切りを果たした場面はとても印象的ですよね。
……ただ不思議というか……
信長が、光秀に裏切られたとわかった時にーー
何故だか、信長は……“唇に手を当てて”から、
「余自ら死を招いた」と述べたと。
……なせ信長は、唇に手を当てたのだろう?
そう文書に残されるということは、これはヒロンが宣教師から聞いた話なのであるが、特記されているということはーー
その話をした宣教師も、その話を聞いて書き記したヒロンも、
……何かしら思うところがあったかもしれません。
そう、二人は当然キリスト教徒という、共通のバックボーンがありますので、
……そう、あのユダの裏切りのシーンを思い起こしていたのかも。
『福音書』の場面ーー
裏切り者ユダは、イエスにキスをした。
イエスは突然だったので、
(唇に手を当てていた。)
『日本王国記』の場面ーー
裏切り者光秀は、(信長にキスをした。)
信長は突然だったので、
唇に手を当てていた。
……なんと!
二人のシーンに、()部分を足すと、全く同じ状況になってしまいます!
もちろんこれは、こじつけかもしれません。
でも、今までの信長とイエスの数多くの《類似》を知る私たちにはーー
この信長が本能寺で、唇に手を当てるシーンが、なにか意味があるようにも感じてしまいますよね。
●只今の信長・イエスの“類似率”はーー
……93%。




