38『第六天魔王』
信長は嘆いた。
この国の現状を知り、こう嘆いたであろうーー
「なぜ心の平穏を諭す仏教が、この日本で宗派争いをしてばかりいるのだ?
あの応仁の乱以上の荒廃をもたらした『天文法華の乱』などの宗教戦争で、いったいどれだけの民衆を、苦しめたのか?
この仏教徒たちは本当に、民衆の救済を考えて活動しているのであろうか?
国家鎮護・民衆救済のためにいるはずの彼らが、この体たらくで、
この国の未来はどうなってしまうのだ
ーーいや、強大な武力を持つ彼らこそが、この日本を悪くしている根源ではないのか?」と。
そして、信長は仏教勢力と戦うためにーー
仏教界最大の敵である《第六天魔王》と、自ら名乗ったのであった。(※詳細後書き)
なので、信長が仏教を嫌っていたとか、だから比叡山を焼き討ちしたと言われる時があるが、そうではないのである。
信長はもし仏教勢力が、この世を良く出来るのであれば、ぜひその力を発揮して欲しかったのである。
仏僧らは、父が元気になると請け負いながら、出来なかった。
まして自らの命さえ彼らは、ありがたいお経を読んでも守れなかった。
仏教国の日本において彼らのこの無責任・無能力をというものがーーこの国をダメにしている。
その原因の大きな一つであると信長は、信秀の
葬儀の時の仏僧を見て、理解したのです。
ーーそう仏教勢力と妥協しても民の救済も、太平の世も来ないと。
実際仏教国なのに平和が実現していないどころか、仏教宗派同士で勢力争いの武装闘争ばかりしてーー
民衆を苦しめているのが現状なのです。
だから、その仏教武装勢力の打倒ーー
そう宗教勢力の武装解除しか、
自由て平等な社会は構築できないと確信しーー
強大な強大な仏教勢力に立ち向かったのです。
そのために信長は自らを《魔王》と名乗った。
仏教界最大の敵《第六天魔王》と。
だが、信長が目指したのは、戦乱続く地獄の世界では、決してなかったのである。
※信長が比叡山の焼き討ちをしたので、武田信玄が信長に、焼き打ちを糾弾する手紙を送った時に「天台座主沙門信玄」と署名してあった。簡単にいうと「儂は仏教界の守護者である」と。
それに対して信長は仏教界最大の敵《第六天魔王》の名を用いて、「第六天魔王信長」と署名した手紙を返した。
ーーという内容が、宣教師ルイス・フロイスが、日本布教長であったフランシス・ガブリエルに宛てた書簡に書いてある。




