30『優しさに、落ちる涙』(イエス)
イエスは“神の子”とか“救い主”と言われるほどの人物なのでーー
人々を救った話がたくさんあります。
その中には《奇跡》を使って病の者を治したり、悪霊を追い払ったものも多い。
ただ、イエスの癒しには、奇跡とか超能力とかを使わずにーー
その優しさのみで、人を救う場面もあります。
その中でも私が一番好きなエピソードが、イエスの伝記である『福音書』の一つーー
『ルカによる福音書』第七章にあります。
※パリサイ人とは、反イエスの律法遵守派のこと。
あるパリサイ人が、共に食事をしてくれるようにイエスを招いたので、イエスはその家に行き、食卓につかれた。
イエスが来られたことを知った、その町で罪女と噂される女が、香油の入れた壺を持って入ってきた。
その女は泣きながら、イエスの後ろ、
そのお足の近くに立ち、涙でお足を濡らし、自分の髪の毛でそれを拭い、お足に口づけして香油を塗った。
これを見た招待主のパリサイ人は心の中で、
「この人がもし預言者なら、自分に触れた女が何者で、どんな人間かを知っているはずだ。
この女は罪人なのに」と考えた。
その時イエスは、
「シモン(ぺトロの本名)、
私はあなたに言いたいことがある」
と言われた。
彼が、「先生、なんてすか?」というと、
「ある貸し主に二人の負債人がいて、一人は五百デナリオ、一人は五十デナリオの負債があった。
返す当てがなかったので、貸し主は二人を許した。
するとこの二人の内どちらがより多く、
その貸し主を愛するだろうか?」
と言われた。
シモンは、「多く許してもらった方だと思います」と答えた。
イエスは「その判断でよろしい」と言われた。
それから女を振り返り、シモンに向かい、
「この夫人をごらん。
シモンあなたは私が入ってきても、足に水を注いでくれなかったのに、
この人は私の足を涙で濡らし、自分の髪の毛で拭いてくれた。
シモンあなたは私の頭に油を塗らなかったけれど、この人は足に香油を塗ってくれた。
ーーだから私は言う。
この人の罪、その多くの罪は許された、
彼女は多く愛したのだから。
少し許される人は、また少ししか愛さない」
と言われた。
それから女に向かい、
「あなたの罪は許された」
と言われたので、列席の人は、
「罪さえ許す、この人は何者か?」
と心の中で思った。
イエスは女に向かい、
「あなたの信仰があなたを救った。
安心して行きなさい」
と言われた。
ーー解説はもちろん、
次のページで!