28『一銭切り』
戦国時代という乱世の悲しい時代において、
平和を目指すにはーー
どうしても信長の優しさよりも、厳しさの方が目立つのは、いたしかた無いとも感じます。
ーー例えば、信長は今まで戦乱の中で、
泥棒・詐欺・犯罪やりたい放題の社会秩序を、
『一銭切り』という処置で犯罪のない地にしました。
一銭切りとはーー
たった一銭でも盗んだら、その盗んだ者は、即刻打ち首……つまり死刑になるというものです。
現代人の私たちから見ると、
「ひぇ~、たった一銭で死刑にするなんて……やっぱり魔王だ!
ひどすきる~」と、感じると思います。
しかし、まず事実としてーー
今まで、犯罪の温床で盗みも殺人も当たり前の世の中で、庶民はいつもひやひや生命の危機に怯えーー
正に生きた心地もしませんでした。
ところで……一銭切りが決まってから、
犯罪は増えたのでしょうか?
犯罪は減ったのでしょうか?
答えはーー
当然……減りました。というか、かなり激減しました。
ーーたった一銭で切られるのです!
これは当然盗みに限ったことではなく詐欺とか、あらゆる不正すべてに適用されてもおかしくない法律なのでーー
殺人はもちろん、軽犯罪も無くなり、なんと戦国乱世の世の中であるにもかかわらずーー
信長の領地はゴミ一つ無く、
常に道は箒ではかれていて、
夜も松明により明かりが灯され、
なんと女一人でも夜中になんの心配もなく歩けた。
ーーそういう記述がフロイスの『日本史』にあるくらいです。
この結果、犯罪が激減したことで民衆はーー
まず生命の心配から解き放たれ、しかも『楽市楽座』で自由経済が可能となったことでーー
民衆の生活も飛躍的に豊になりました。
つまり、“一銭切り法”は、天下の悪法ではなくーー
恐ろしいイメージとは全く逆に、
この時代に見事にマッチした、庶民を救うためのーー
素晴らしい制度だったのです。
ただ、現代人からすると、
「そういう時代だからといって、簡単に打ち首になる制度は……
やっぱり信長は、恐い!」
と思うのも当然ですがーー
実は信長にはーー
正に救世主らしい優しさを伝える、感動的なエピソードかあるのです!