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277『――そして、伝説へ』〈ザビエル〉



「……信長少年よ、やはりやめましょう。今の私には――」



鴨川の浅瀬で織田信長と対峙して立つフランシスコ・ザビエルは――

苦渋の表情で、洗礼(パプテスマ)を断ろうとした。

(恐ろしいほどのサタンの霊力、私に制御できるとは思えません……)


○『しかし、イエスは答えて言われた、

「今は受けさせてもらいたい。このように、すべての正しいことを成就するのは、われわれにふさわしいことである」。

そこでヨハネはイエスの言われるとおりにした。』


●しかし、信長は言った。

「俺にはパプテスマを受ける理由がある。

――親父を救いたい!父織田信秀を救いたいんじゃ」

そこでザビエルは信長の言われるとおりにした。


○『イエスはバプテスマを受けるとすぐ、水から上がられた。

すると、見よ、天が開け、神の御霊が鳩のように自分の上に下ってくるのを、ごらんになった。』


●信長はパプテスマを受けるとすぐ、水から上がられた。

すると、見よ、天が漆黒に覆われ、黒き霧が竜のように自分の上に下ってくるのを、見た。


○『また天から声があって言った、

「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。』


●天にある黒き竜は言った。

「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」


「やはり……サタン……」

……ザビエルはその幻聴とも覚える黒き竜の声を聞き、愕然とする。

「やはり私のパプテスマでは効果はなかったか……」



いや……そうではない!

我が同志ザビエルよ!

黒き竜は言った、

私の愛する子と……

悪の化身が述べたその言葉から、愛と言う正義の言葉が発せられた。

つまり……

少しはハルマゲドンを遅らせることができたのかもしれません。

そうに違いありません。


「あっ、あ……その声はロヨラ様!」

我がイエズス会の秘技『霊操』により練られた霊力が、言葉を運んでくれたのですね。良かった……本当に良かった。そして……



「……ロヨラ様、私はもう疲れました。」



フランシスコ・ザビエルは、サタンとの遭遇で精力を消耗してしまったかのようにその年の内に重病を発し、――翌年亡くなった。

ザビエルは死後、その東方布教の功績により聖別され、

聖フランシスコ・ザビエルとして伝説の人物となった。





《次回》

一方、ザビエルよりパプテスマを受けた信長は――……


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