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276『シンクロする運命』

サラ、サラ、サラ……

足元を小魚たちが泳いでいく。


フランシスコ・ザビエルは京を流れる――

鴨川の浅瀬に呆然と立っていた。

その手には『聖書』を開いてある。


「……これで良かったのですね、ロヨラ様……」


ザビエルは、今まで起こったことをつい、『聖書』――

その中の『マタイによる福音書』と照らし合わせていた。

(以下『』内、同書)


○イエスが、ガリラヤ地方の父親ヨセフのもとで、大工仕事を手伝っていた頃――

『――そのころ、バプテスマのヨハネが現れ、

ユダヤの荒野で教を宣べて言った、

「悔い改めよ、天国は近づいた」。 』


●織田信長が尾張の父のもとで、大うつけと呼ばれていた頃――

天文二十年の正月に、フランシスコ・ザビエルが現れ、

京の瓦礫の荒野でキリスト教を宣教した。

「悔い改めよ、天国は近づいた」。


○『このヨハネは、らくだの毛ごろもを着物にし、腰に皮の帯をしめ、いなごと野蜜とを食物としていた。』


●このザビエルは、教会の規律を厳格に守り清貧を旨としていたので、ボロボロの薄汚く汚れた黒のカッパ姿で、食事も信者からのお布施に頼っていたためフラフラであった。


○『すると、エルサレムとユダヤ全土とヨルダン附近一帯の人々が、ぞくぞくとヨハネのところに出てきて、自分の罪を告白し、

ヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた。』


●すると、「新しい教えを説く異邦人がいるぞ」と話題となり、ザビエルが最初に上陸した九州や京付近一帯の人々が、ぞくぞくとザビエルのところへ出てきて、自分の罪を告白し、

入会の儀式として鴨川でパプテスマを受けた。


○『そのときイエスは、ガリラヤを出てヨルダン川に現れ、ヨハネのところにきて、バプテスマを受けようとされた。』


●その時信長は、尾張を出て鴨川のほとりに現れ、ザビエルのところにきて、パプテスマを受けようとされた。


○『ところがヨハネは、それを思いとどまらせようとして言った、「わたしこそあなたからバプテスマを受けるはずですのに、

あなたがわたしのところにおいでになるのですか」。 』


●ところがザビエルは圧倒的なプレッシャーを感じて、洗礼を授けるのを躊躇った。


(――ロヨラ様、

私の霊力を遥かに凌ぐこのプレッシャーを前に、果たして洗礼は意味があるのですか?

いえ、まだまだ未熟な私が洗礼を授けた場合、サタンの霊力を抑えるどころか逆に刺激させてさらに強大化してしまうかもしれません)


イエズス会教会長イグナチヲ・デ・ロヨラの命により――

サタンを封じるために、その為に遥か西方のポルトガルからやってきた元騎士のザビエルであったが……

その強い意思すら挫くほどのプレッシャーを、目の前にたつ獣のような少年、信長が放っていた。




「……信長少年よ、やはりやめましょう。今の私には――」




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