274『〈秘跡〉パプテスマ』
「ザビエルさん、サタンとおぼしき存在と出会ったら、
我が教会の《7つの秘跡》の内――
“入信の儀式”となる秘跡を行いなさい。
そう、つまり《洗礼》を施すのです、
あなたの全ての霊力をもって!」とイエズス会教会長ロヨラ。
「なんと……パプテスマを!」
「そうです、つまり、悪の霊的存在であるサタンの霊力を、
我が主イエスへの信仰心から得られた《霊操》による正義の聖なる霊力をもって――抑え込むのです!!」
ロヨラは、もう興奮を押さえきれず元騎士隊長の激しさで――
「そう!ザビエルよ、あなたの全ての霊力をもって!!」
「私の全ての霊力をもって……!!」
「相手はキリスト教最大の敵、ザビエルさんが勝てる相手ではありません。
しかし、私の一番弟子であるあなたのその霊力なら、サタンの霊力を割き――
《ハルマゲドン》を起こす時期を、少しでも遅らせることが可能となるでしょう!」
「……しかし、上手く洗礼までサタンをもっていけるのでしょうか?」
「それは心配に及びません。
あなたの程の霊力を持つものは、同じく強大な霊力を持つ者を引き寄せます」
…………。……。
……そう、あの10年前のロヨラ様とのリスボン港での話より、ついにこの時がきた!
……そう、私の目の前に、サタンが立っている……!
※《秘跡》とは「イエス・キリストによって制定され、教会にゆだねられた、神の恵みを実際にもたらす感覚的しるし」のこと。
カトリック教会が伝統的に認めてきた七つの秘跡とは洗礼、堅信、聖体、ゆるし、病者の塗油、叙階、結婚のこと。
その内、洗礼は入信の儀式、つまり信者が初めて受ける秘跡である。




