272『カッパ・ザビエルVs.サタン・ノブナガ?!』
ゴゴ……ゴゴゴオォォ……
漆黒の雲に覆われた闇の中――
雷鳴のように白い光が縦横に素早く走る。
そしてその白い光は、ある者から発している。
その者の頭頂部は円形に剃り上がっているが……もちろん、光はそこからではない。
そう、その者は、手に武器を持っている。
それは……槍だ。
そう、あの十字架にかけられしイエスに止めを刺した伝説の槍――
「……この化物め!、我が教会に伝わる聖遺物――
――《聖槍ロンギヌス》をくらえ!!」ザビエル渾身の一降り!
ぐ……おォォオ……
獣の姿をしたサタンを、聖槍が切り裂く……
「やりました、ロヨラ様、ついに私はサタンを倒すことができました」興奮して涙を流すザビエル、を呼ぶ声……
……ザビエルさん……、ザビエルさん……
季節風が声を彼方へと運んでいく――
ここはポルトガル・リスボン港。
イエズス会師達は、ここから世界布教の旅に出ていった。
「ザビエルさん、ザビエルさん、大丈夫ですか?
……何か話の途中でぼぉ~っとしていたようですが?」
イエズス会教会長イグナチヲ・デ・ロヨラは、怪訝な顔をしながら話しかける。
「あっ、はい我が師ロヨラ様……」
ザビエルは申し訳なさそうに、円形に剃り上がった頭頂部を擦りながら、
「確かサタンを倒す、あっいえサタンの魔力を削減させる……
その方法のお話でしたよね?」
「そうです、ザビエルさんも何か、私が見た黒き竜の話に触発されて……今なにか幻影を見ていたのかも知れませんね」
ロヨラは「良い兆候です、サタンを見つける為の……」と一人頷くと、ザビエルへサタンとの闘いの方法を伝授する。
「……サタンとは、当たり前ですが、元天使、堕天使なのですから、
すなわち《霊的》な存在ですので……
ザビエルさんがいかに騎士として強くても、勝負にすらなりません」
「……ではどうしたら」
「霊的な存在には、霊的な力を使うのが道理、
我が『霊操』によって得られたあなたの霊力を――」
「ロヨラ様に霊操プログラムを伝授して頂き、そして得たこの私の霊的な力をついに活かせるのですね!……しかし、どうすれば?」
「私の予感が正しければ、あの黒き竜はサタン、獣にも人にも化ける事できます。
……そう、つまり人の言葉も解せるのです!!」
「……えっ?!」ザビエルはあまりの衝撃に頭頂部を溢れるように流れ落ちる汗を拭おうともせずに、
「……と、いうことは……ま、まさか……?!」
……まさか……あの秘跡を……
……サタンに……




