268『圧倒的プレッシャー』
1551年(天文20年)正月 京都
「ここが、日本の首都である京都なのですか……」
天文法華の乱……
天文元年の山科本願寺(浄土真宗)と日蓮宗(法華宗)の宗教戦争、天文5年の日蓮宗対比叡山延暦寺(天台宗)の宗教戦争により、京都は灰塵と化し、そのた被害は応仁の乱を越えた。(『国史大事典』)
つまり、当時の宗教団体は時の政権に圧力を加えたり他宗派を攻撃したりする武装勢力であり宗教戦争を繰り返していた。
そう考えると後に織田信長が何故比叡山を焼き討ちにしたり、本願寺と対決したりしたのかがよくわかりますね。
そう政教分離と非武装化の為なのです。
「こんな場所に長居しても無駄ですよね。……」
天文年間に起こった宗教戦争の傷跡をまじまじと見つめながら、フランシスコ・ザビエルは深い溜め息をついた。
そう、頭では理解している。
こんな所にいても意味がないと……。
しかし、これはなんなんだ……。
この、私の帰りを引き留めるような、この感覚……。
「……。」
……ザビエルは感じていた、この日本に着いて初めて……
この剃り上がった円形の頭頂部が、火傷するくらいひりひりする異様な感じ……を。
「はっ!……ロ、ロヨラ様これですね、
……この強大なプレッシャーこそ……!」
そしてザビエルは気付くと、黒い風に囲まれていた。
ザビエルの周囲に黒い風の筋が幾重にも立ち上ぼり、まるで生き物のように、そう大蛇のように大きくうねりながら……
たくさんの大蛇たちが廃墟と化した京都の風景をまるで消し去るかのように、どんどんと漆黒に塗り替えていく……
「この黒い大蛇のようなものは……」
いや、私には解っている。これは、あれしかありませんよね。
やっと私にも見えるようになったのですね、ロヨラ様!
ザビエルは圧倒的なプレッシャーに畏怖を感じながらも、その黒い大蛇の群れがはっきりと今見えることに、感動していた。
「これこそ、これこそが――
ロヨラ様直伝の『霊操』プログラムの成果です!!」
漆黒の空に向かってそう叫びながら、どんどんテンションが高まっていくザビエル、
その辺りを漆黒に巻き混んでグルグルと旋回していたその黒い大蛇の群れは、ある一方へ一方へと流れていく――
その流れていく風の向こうには……
次回『……ついに、キリスト教最大の敵サタン登場?!』
乞う、ご期待!




