254『ハルマゲドン』
「……黒き龍は倒せない。
では、ロヨラ様、私はサタンと闘うのは何のためなのですか?」
ザビエルにはロヨラの意図が解らず、剃り上がった頭頂部をさする。
「まだわかりませぬか、我らが世界布教を目指しているのは一重に信者を“来るべき終末”まてに――最大限に増やすこと!」
「来るべき終末……つまりは……
……《ハルマゲドン》……!」
「そうです!」ロヨラは、ハルマゲドンという言葉を聞き、もと騎士の血が騒ぐのか熱く語りだす。
「ハルマゲドンは『新約聖書』唯一の預言書である『ヨハネの黙示録』に書かれありますので――必ずや起きます!
それが起きるのは確実なのですが、当然我々にはいつ起きるのかはわかりませぬ。
ただ私たちキリスト信者ができるのは、その終末まで神を信じぬくこと!
そして私たち伝道者がしなければならないのは、我が神の存在をまだ未開な地の未開な者たちに伝えることです!
それこそが大いなる救済の為に自らの命を捧げた――
イエス・キリストの御心に応えるということなのです」
「そういうことでしたか、ロヨラ様!
黒き龍は倒せなくても良い、何故なら……」
「そうです、我が『霊操』をマスターした貴方がサタンと闘えば、必ずやその強力な魔力を押さえることができましょう。
そう、たとえ一年でもいえ、例え一日であったとしてもサタンの暴走を食い止められるよう、奴の魔力を削ぎ減退させることができれば――
それだけ世界中の多くの人々を救うことができるのです!」
そこまで言うとロヨラは指揮官の眼差しで、
東の空を大きく右手を伸ばして指し示し――
「――ザビエルさん貴方の使命は、黒き龍を見つけ、そして闘い――
……少しでもハルマゲドンを遅らすことなのです!!」




