253『サタン』
「それは大丈夫です!」
ロヨラはザビエルを信頼の目で見ながら、
「私の霊操プログラムを完全にマスターし、しかもこのモンマルトルの丘で神に――
“まやかしには屈しない”と誓願した今の貴方なら、必ずや黒き龍を見つけることができましょう」
「ロヨラ様……」ザビエルは円形に剃り上がった頭頂部をさすりながら、
「私がもし黒き龍を発見したとして……
その後は……私は何をしたら……?」
「もちろん、闘うのです!
我々イエズス会は、『闘う教会』を目指してますからね!」
「解りました!教会長の命令は絶対です!
――そして必ずや黒き龍を倒します!」
ロヨラの騎士として戦場で戦い、大きな傷を受け、騎士としての生命を奪われた。
その失意と苦悩の中で彼は救いを求めるためにマレンサの洞窟にて修行をし、そして神を見いだした。
そのためイエズス会は、ロヨラの軍隊生活の経験も活かされ――
カトリック改革を目指したイエズス会は教皇と教会長の命令は絶対遵守にして間違ったの者へは徹底的に糾弾するという『闘う教会』と呼ばれた。
そうイエズス会士ザビエルは、上長の命令なら世界の果てでも布教に行く、黒き龍を倒せと命じられれば闘うという修道士にして騎士の気概をもっている者なのである。
「……いえ、黒き龍は倒せません!」
ロヨラは残念そうに首を横に振る。
「えっ、それは何故てすか……私がまだ未熟者だから……」
「そうではありません、あの黒き龍……
私の予感か正しければ、キリスト教最大の敵……
……《サタン》の化身ではないかと……」
「……サタン!!」
「はい、サタンを倒せるのは、我が神イエス・キリストのみ。
ご存じのように――
『ヨハネの黙示録』にて書かれてある通りです!」




