251『霊操』
「五月頃から黒き龍が……」
ロヨラは顔をしかめながら空を見上げる。
「私にだけ、黒き龍が空で渦巻いているのが見えていたのです……」
「まさか……そのようなことが……
……しかし、ロヨラ様が仰られることですから」
ロヨラ様は、直感力……そう“霊感”に優れておられる。
もともとこのイエズス会も、ロヨラ様がマレンサの洞穴で修行なされ神の啓示を受け……
それを『霊操』という書物としてまとめられたものを、我々六人に伝授して頂いたのが始まりなのですから。
そう『霊操』とは鍛練の書であり――
「体操」で身体を鍛えるように、『霊操』は霊魂を鍛えることを目的とするのだ。
修行の到達点においては神と深い人格的交わりを持つ=神の御意志を見出すことができる秘技である。
(イグナチオ・デ・ロヨラ著『霊操』より要約)
「黒き龍は今も……この空を……?」
いたとしても、今も私には見えてないだけだろうか?
「……いえ、今はいません。
私がこのイエズス会を創設を期し、モンマルトルの丘で誓約をたてようと決意した日……
そうその日、私の決意するのを待っていたかのように……
いつも以上に上空でグルグル旋回した後、東の空へ飛んでいきました……」
黒き龍の正体とはいったい?!
それは織田信長と関係があることなのか?
次回、このあとすぐ!!




