244『ヨーロッパ、世界制覇の野望』
「そうである。
いつ奴ら南蛮人が諸外国のように、我が国を侵略しようとするか分からん。
――であるが、後十年もあれば天下統一である。
それまでの――時間稼ぎである」
「十年とは信長様ご謙遜を。あと毛利を撃破すればほぼ天下統一なのですから。
でもなるほど、国教をキリスト教にすると宣言しておけば――
すぐにキリスト教国に攻撃されることは無いと。
さすが信長様」
ヴァリニャーノは巡察師である。つまり、ヴァリニャーノは信長の事をローマ教会に職務上必ず報告するのであるから、ヨーロッパ諸国にもその情報は確実に伝わる。
――そう「極東の王は国内統一したら、国教をキリスト教にすると――」。
信長は宣教師だけでも記録にあるだけで三一回も会っている。
もちろんそれ以外に舶来品好きの信長のおさえる堺に往来する、ヨーロッパ商人との交流もあったであろう。
そして、アフリカ生まれで、バスコ・ダ・ガマがみつけた《東方航路》にそってインド――そして日本にやってきた――
《大航海時代の体現者》
――アフリカ人“彌介”を歴史上の事実として家臣にしていたのだ。
――だから信長は彼ら外国人から情報を得――
アフリカ、インド、南北アメリカへのキリスト教国の侵略を知っていたのである。
「余は日本を守らねばならぬ」
そう決意の顔で頷く信長の顔は、ヨーロッパの怒涛の侵略の矛先が――
最後の“フロンティア”《極東》(中国・日本周辺))に迫って来ていることをひしひしと感じていた。
――そう信長による天下統一事業は国内の大名・宗教武装集団と戦い――国内に安定と平和を達成するだけでなく、
いつかは《必ず》侵略してくるヨーロッパキリスト教国に対抗するために、早急に国内を富国強兵を目指さなければいけないという――
時間との壮絶な戦いであったのだ。
「しかしそれでは、信長は『福音書計画』などせずに、自ら命を捨てないで長生きした方が……
日本の防衛力のためにはいいのでは?」
――次回、この読者皆様の疑問が――消え去ります!!




