239『不思議なパーティー』
信長の思想を知るには、当然その時代背景を知ることが必要!
ということで、《信長の時代》に迫ります!
天正九年(1581)
七月十六日、本能寺の変の約一年前――
石段の山道を人々が途切れなく往来している。
ここは道幅3m程度の山道で、道は天主閣、――つまりあの絢爛豪華な安土山山頂の《安土城天主》に向かうメインストリート『百々橋口』である。
山頂を見上げると燦然と輝く天主――
安土城は七層六階の高層建造物で、五階が六角形で法隆寺の『夢殿』の様であり、最上階はなんと『金閣寺』を持ってきて置いたみたいに――部屋の外観全体をを金箔で覆ってあり、信じられない美しさ。
その上、屋根瓦はなんとこれまた金箔入りの唐瓦を使用しており――
いつも太陽の光を浴びてキラキラと輝いているのであった。
ざわざわ……
ざわざわ……
――その天主へ向かう百々橋口道が急にざわついた。この道は市民に解放してあったので――
てっきり天主を見て歓声を上げていると思ったら……
なんと、山頂ではなく山麓からざわざわとするではないか。山麓で何かあったようである。
ざわめく市民達の視線をたどってみると――
な、なんと……
その視線の先には――
石段を上ってくる――信長に注がれていた。
これは不思議である。当たり前だが――安土山全域が安土城の城郭域なのだから、その持ち主の信長がその城内道を使っていても、なんの不思議もないはずである。
――と、もっとよく見ると――
安土市民の視線は信長――というより、そのお連れね者も含めた――
“集団全員”に集まっていた。
――その集団の先頭を歩くのは当然――信長。
裃姿である。
そして、その右隣には、ヴァリニャーノ。
実在したキリスト教修道会であるイエズス会の最高幹部で、世界中の宣教師や信者を統括する巡察師である。
史実、信長と首脳会談を行い、キリスト教布教の一層の協力養成を求めるため上洛した。
その時に献上したのが、王公貴族が座る豪華な西洋椅子と、黒人奴隷であった。『日本巡察記』
そして信長の左隣には、彌介。
そう、ヴァリニャーノが、アフリカから連れてきた実在した黒人奴隷である。信長が気に入って、贈り物の奴隷を家臣として召し抱え、彌介と命名した。
しかも、優秀だったためかボルトガル語とともにキリスト教義も教わり、巡察師に付いてインドでは布教の手伝いをし、この日本でも日本語を学び話せるようになり、布教の手伝いをしていたと『日本巡察記』や『家忠日記』に記される才人である。
その三人のすぐ後ろに、ロレンソが付き従っていた。
ロレンソは、実在した日本人の元仏僧で、宣教師の布教によりキリスト教の修道士なった。ボルトガル語も学習しており、宣教師の通訳を務めることが多いので、史実信長と旧知の中である。
――そう、だからこそ、この光景が目を引かない訳が無いのである!
何故なら――
何故なら、この不思議なそして《実在》したパーティーは、……