14『裏切られる二人』(信長)
※この章は、前章までと違い、信長とイエスの類似性の視点から本能寺の変に迫る内容です。そのため第三章では、改めて本能寺事件に関連する基本的情報・内容が、述べられています。前章までと内容が重複することがありますが、ご了承ください。また重複箇所は、今までの“おさらい”と感じて頂ければ幸いです。
戦国覇王信長は、天正十年(1582)年、家臣である明智光秀の裏切りにあいこの世を去った。
ーーいわゆる『本能寺の変』です。
これは日本史上最大級の事件であり、信長による天下統一目前のことでーー
しかも家臣に殺されるという、その死に様は衝撃的であった。
一方、イエス・キリストの十字架までの流れは、
イエスが弟子たちといる時にーー
弟子の一人であるユダが、憲兵を連れて突然やってきて、師であるイエスを捕まえさせた。
ユダの裏切りの動機として、
裏切りの褒賞として銀貨三十枚をもらっており、つまりお金で師であるイエスを売ったのです。
そしてイエスは、裁判にかけられーー
なんと“偽物の救世主”として、刑死場であるゴルゴタの丘で、十字架の刑に処せられました。
これは現代からみると、世界史上最大級の事件であり、神の子がその弟子に……
神の子が自ら選んだ弟子に裏切れ、死を迎えるというーー衝撃的な最期でした。
ーーさすがに読者諸兄の皆様方も、
《二人の最期》に関しては、少しは似ていると感じられると思います。
おさらいになりますが、信長を裏切った明智光秀という家臣は、信長の家臣の中でもあの羽柴秀吉、後の太閤豊臣秀吉と、一、二を争う重臣でした。
最終的には、本能寺の変の時点で、織田政権の中枢である京都を要する近畿の最高責任者に上り詰めていました。
すでに六十歳を超えた、老人光秀としては大抜擢です。
当然、信長が政務や朝廷との交渉などで京都に訪れてる時の、警護や安全保障、その他の準備・執行も光秀の責任です。
つまり、織田政権のナンバー2は、
遠く中国地方で大活躍している羽柴秀吉ではなく、信長の安全ーー
つまり自らの命を預けている明智光秀であったとしても過言ではない。
それほどまでに、実は織田信長は、明智光秀を信頼しているのです。
逆にだから信長は、京都近くには信頼できる光秀がいるからと、安心して本能寺に少数のお供だけで宿泊したのでした。
……そして、一番信頼している家臣に裏切られた信長。
ーーしかし、イエスはどうなのか?
裏切った弟子のユダは、世界中で裏切り者=ユダという感じで、裏切り者の代名詞になっている人物であるのに……
はたして、共通点はあるのだろうか?
※(本章では、信長とイエスの対比に焦点を当てるために、分かり易くするためーー
信長の『救世主伝説』計画説は取りません)




