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第2話 人形【フィギュア】

-------第2話 人形【フィギュア】----------

私は絶句していた。

目の前で動き、踊り、しゃべる人形たちに。

「来たようだな、こんな辺鄙なところに来るにはそれなりに時間がかかるし、なにより疲れただろう?」

神社の隣にある住宅の方から鮮やかな蝶の刺繍が誂えてある黒い着物を着た女性が私に声をかけながら歩いてきた。

下駄を履いているようであるくたびにカランコロンと小気味いい音をたてる。

「ふむ、名前からは男だと思っていたが、随分可憐な姿をしているではないか。藤村雪久君。」

彼女は菊人形達を集め、しゃがみ小声でに何かを話すと人形たちは一斉に神社の本殿の中へと入っていく。

「君は、人形【フィギュア】を見るのは初めてか?」

「人形【フィギュア】、ですか?」

「そうだ、その様子だと知らないようだな。まぁ、中に入りたまえ。話はそれからでもゆっくりできる。」

彼女は出てきた住居へと戻っていき、玄関前でくるりとこちらを向き、”おいで”と手招きをする。

私はすべてのことに疑問を持ちながらも彼女のあとについていく。

「私たちが住む家だ、君の部屋ももう用意して置いてある。最初に荷物を置いてくるといい。ここの突き当たりを右に曲がってすぐ左を向くと扉がある、そこが君の部屋だ。私は先に茶の間にいる。案内は先ほど君も見た菊人形にさせるからゆっくり整理してくるといい。」

そういうと彼女は廊下に途中から左に曲がっていった。

私は言われた通りの道を歩き私がこれから暮らす部屋の前までくる。

その部屋の反対側にもう1つ同じような部屋があった。

気になりはするが勝手に入ったらさすがにまずいだろう。

好奇心をぐっと抑え、目の前のドアを開ける。

「……広い、私が住んでた部屋より広い。」

生活に必要そうなものはすでに揃っていた。

テレビ、クローゼット、テーブル、ソファ、ベッド。

手ぶらでここにきても住めるくらいには。

とりあえずスポーツバッグをベッドの上に置き、クローゼットを開けその中にキャリーケースを閉まった。

「これ持ってくるのが一番重かった…。ノートの割に重すぎ。」

スポーツバッグの中からノートパソコンを取り出してテーブルの上に置く。

亡くなった父から誕生日のプレゼントとして買ってもらったものだ。

型は古いものだが愛着はあるしまだ現役なため持ってきた。

それを眺めてパソコンの上をなでているとドアがノックされる。

「準備できたー?」

「主様が待ってるのー」

先ほどの菊人形の子供達の声。

「あ、今行きます。」

そう言ってドアを開ける。

小さな菊人形が無垢な笑みをこちらに向けて片方は私の手をつかみ、片方は私の腰を押しとたとたと走り出す。

「わ、わ、ちょっと!?」

私もその力に逆らえずされるがまま一緒にとたとたと走り出す。

最初に入ってきた玄関前に出る廊下まで戻ってきて、さらに右に曲がる。

「みんな、待ってるのー!」

「楽しみにしてたんだよー!」

そのまま一緒に走っていると子供達はとある部屋の間でぴたりと止まる。

2人がその引き戸を開けると中では、テーブルをはさんだ左側に出迎えてくれた彼女と巫女服(といっても下衣が赤ではなく黒)をきた小さな女の子、右側には巫女服を着た私と同い年と思われる女性とジーンズにTシャツにパーカーを着たカジュアルな格好の女性が座っていた。

「座るといい、好きなところで構わないぞ。」

どうせなら年が近い人と座ったほうが幾分か気が楽という理由で私は巫女服を着た女性の隣に座った。

それをみた彼女が口を開く。

「さて、まずは名前を覚えてもらわんとな。私はここの家主、宮崎龍だ。そして隣にいるのが私の妻の…。」

「宮崎静、よろしくね、雪久ちゃん」

…ん?

いま、『妻』って言った?この人。

そんなことを思っているのが顔に出たのか、対面の彼女?がクスッと笑う。

「今、君は不思議がったな。なぜ女なのに『妻』という単語を使ったのか、と。その理由はいたって簡単だ、私は女性ではなく男性だからだ。」

…は?

「…は?」

心の中でつぶやいたつもりだったものが口から出てしまった。

私はしまったと思い口を片手で塞ぐが、彼はクックックと笑っている。

「いや、その反応は仕方がないものだ。人として当然の反応だ。君は何も間違ってはいない。確かに私もこのような姿だが、それよりも不思議な存在が私の隣にいるだろう。」

そうだ、彼は隣の少女を確かに『妻』といったのだ。

見た目はまだ14か15歳だ。

「というか、雪久ちゃんも人のこと言えない容姿してるよね。事前に知らされなかったら正直女の子だと思うもん。」

彼女の発言に隣にいた龍さんもククッっと笑った。

そう言われてしまえばそうかもしれない容姿を私もしているが、それでも少しは男としての特徴もある。

だが、この人は違うのだ。

そのまま、女性なのだ。

言葉遣いだけは女性らしいとは言えなかったものの容姿は女性なのだ。

そして私は気づく、もしかしてこちら側で座っているこの2人のどちらかも男性なのではないかと。

「もう、伯父様と伯母様のインパクトのせいであたしたちの名前が言えないじゃない!」

カジュアルな格好をした方の女性がしびれを切らし口を開く。

それを見た隣の女性が苦笑を浮かべる。

「雪久…だっけ?あたしは桜ノ宮杏。伯父様の妹の子供なんだけど母様はいろんな国を飛び回るの好きで父様と一緒に行ってるから、ここに預けられてるの。よろしくね」

「最後に私ですね、私は宮崎譲。そこの夫婦の息子です。」

こちらに来てから驚きの連続でほかのところへ行ったとしてもこれ以上のことはそうそうないだろう。

「さて、名前は覚えてもらえただろうから、次に君が初めて見た人形【フィギュア】について話そうか。」

彼が引き戸の前にいる菊人形に目配せすると2体の人形たちはとてとてと奥へと走っていった。

彼は話を続ける。

「君も見た通り人形に意志や感情が宿ったモノのことを私たちは人形【フィギュア】と呼んでいる。そして、私たち人間と主従の契約を結び、共に暮らす。もちろん、捨てられた野良もいる。」

そこまでで話を区切ると先ほどの菊人形達がお茶とお菓子を運んできた。

彼は運ばれてきたお茶をすするとまた話し始める。

「…人形【フィギュア】と契約した人間は操者と呼ばれ、体のどこかにそれに準じた刻印が刻まれる。私の場合は背中に菊の刻印がある。次は…、種類だな。今、茶を運んできたこの菊人形たちはドールと呼ばれる種類だ。フランス人形やひな人形、五月人形、市松人形などがこの分類だな。」

菊人形たちは彼のそばで行儀良く座っている。

つまり彼女らの主は彼なのだろう。

そこまで話を区切ったところで、今度は杏さんが喋り始めた。

「あたしはフィギュアっていう種類と契約してるの。形は様々よ。あんたもトウキョウで見たことあると思うけどあの小さめのやつから等身大のものまであるわ。今はちょっと見せられないけど、今度見せてあげるからあたしの部屋までいらっしゃい。」

そういって私にウインクをしてニコッと笑ってきた。

そんなやりとりをしていると隣にいた譲さんが立ち上がってどこかへいってしまった。

私が首をかしげている龍さんが口を開く。

「あぁ、おそらく人形【フィギュア】を取りに行ったのだろう。わりと特殊なものなのでな。」

「じゃあ、その間私の人形【フィギュア】紹介するね!私のはアニマルって種類。動物の剥製とかがおもにこれに入るかな。あとはこのシキガミっていうのもこの分類!」

そういって袖から人の形をした紙を取り出してひらひらさせる。

その紙を自身の隣にぽいっと投げるとBONという音とともに小さめのカラスが現れ、彼女の方に乗る。

『ほう、新しき者を招き入れたか。我が主もお人好しだのう』

この場の誰でもないとても渋い声が聞こえた。

私はあたりをキョロキョロとするが直ぐに誰の声だかわかった。

このカラスだ。

このカラスから先ほどの声が聞こえたのだ。

カラスは私の様子を見ると呆れたようにため息をつく。

『人形【フィギュア】が喋ることくらい珍しくなかろう。』

「ジン、この子はトウキョウからきたから知らないのよ。」

『ほう、あの隔離都市からか。それはすまなかったな。ワシはジン、この者と契約している人形【フィギュア】だ』

彼女の方に乗っているカラスはそういうと深くお辞儀をした。

私もそれに釣られるようにお辞儀をする。

『ほっほ、なかなかに礼儀を忘れておらん偉い子じゃな。隔離都市から来たものはワシたちを軽んじるフシがあるが、お前はそうでもないようだ。』

そんな会話を続けていたら、譲さんが戻ってきた。

隣にもう1人女性を連れている。

「お待たせしました、私が契約しているのはオートマタという種類の人形【フィギュア】です。そうですね…、アンドロイドやロボットや、プラモデル、あとは戦隊もので出てくるロボットの玩具もこの分類ですね。ちなみに私はアンドロイドと契約しています、この子がそうですね。」

隣の女性が深くお辞儀をして口を開く。

「初めまして、私、シグマと申します。以後、お見知りおきを」

またつられてお辞儀をした。

私が顔を上げて龍さんの方へ向き直る。

彼はにっと笑い手をパンッと叩いて、こういった。

「さてそれでは、雪久君。君の人形【フィギュア】を見つけに行こうではないか!」



どうも、アマギです。

今回、種類としてのフィギュアとすべての呼称をひとまとめにした呼び方の人形【フィギュア】で呼び方を分けています。

読みづらかったと思いますがご了承ください。


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