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何かに使う予定だった執筆途中の文書

 お腹が痛い。


 僕は、お腹の痛みで目が覚めた。

 

 昨日、悪いものを食べたのかもしれない。何を食べたかと、思い出そうとしてみた。


「えっと、たしか……」


 思い出せなかった。僕は、まだ高校生である。高校生にして、すでに記憶が曖昧である。将来が思いやられる。


 僕は、部屋のカーテンを開けて窓の外を見た。


 朝日は沈みっぱなしで、マンションの間をオレンジ色の街灯がちらほらと点いていた。車が時折、申し訳なさそうに静かに通り過ぎていった。


 僕は、薄暗い部屋の中で光る壁掛け時計で時間を確認した。(日中の電球の光を吸収して、電気が消えると緑色に光りだすタイプだ)


「朝の5時か」


 もう一回寝てもいいけれど、もう一度学校に間に合うようにちゃんと起きれる自信が僕にはなかった。とはいえ、やることは僕にはない。残りの数時間を起きて過ごすか、それとも寝て過ごすか。


 なんだか世界の命運を託された勇者のような存在になった気がした。


 僕が寝たら世界は終わるのか。それとも世界は救われるのか。


 深夜に僕は何を考えているんだと疑心暗鬼に陥った。もう高校生である。中2病をこじらせている場合では無い。


 結局僕がとった行動は、寝ないことだった。勉強机に向かって少し歩き、僕は勉強机の前の椅子に座った。机の上に置いてあった読みかけの雑誌を手に取った。


 僕は、少しだけオシャレに興味があった。たいそうな服をお金を買うお金は無いから、ファッション誌を眺めるのが最近の日課だった。ファッション誌といっても、「この夏のコーデ特集」とか「モテる男子のなんとか講座」「あーだこーだのこーだあーだ特集」という系統の雑誌は好きじゃなかった。


 別に雑誌の中に広告がたくさんあっても僕は嫌じゃ無い。むしろ、雑誌の中に入れる広告すらもオシャレな広告を入れて雑誌のコンセプトを損なわないような気配りのある雑誌が好きだ。

 

 モデルがポージングを取っている写真、日常を切り取っているような写真。自然なようで人工的な感じの写真がたくさんあるファッション雑誌が僕は好きだった。


 頬杖をつきながらぺらぺらと雑誌をめくった。雑誌をめくるたびに、紙が擦れる音が部屋の中で静かにループした。

 


 どこからともなく声が聞こえてきた気がした。聞き覚えのある声だった。えっと、誰だっけ。


「ご飯だよー」


 母さんだった。僕は、毎朝決まって母さんのこのフレーズに起こされる。お腹がとても空いているわけじゃないけれど、ご飯だよと呼ばれると無性に置きたくなってしまうのである。


 僕は、思い頭を上げた。すると、自分の顔の脂を適度に吸った雑誌の1ページと、その横に流れるささやかなヨダレが僕の目に入った。


 雑誌のページは、タバコの広告だったので特段ショックな気にはならなかった。むしろ、広告の中のたばこの白いパッケージが若干黄ばんでいるのが少し面白かった。


 顔のヨダレを着ていたTシャツの袖で拭いて椅子から立ち上がって部屋を出た。


 都内の2LDK。そんなに大きくはない部屋に僕は住んでいる。


「おはよう。起きたばっか?」


 母さんは、フライパンで何かを焼いていた。


「早朝の5時に起きちゃって、起きれないと思って雑誌を読んでたんだけどそのまま寝落ちした」


「でも、奇跡的に現世に戻ってきた」


「母さんのご飯のおかげだと思われれます」


 僕は、軽く会釈をした。


「はいはい、軽いお世辞をありがとうございます。ほれ、とりあえずおすわりなさい」


 母さんは、視線をダイニングテーブルにやった。母さんの視線に言われるまま僕はダイニングテーブルの椅子に座った。


 


 

 

 

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