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「予定があります」という響き

「予定があるから、今日は早めに帰ります」


 耽美な響きである。後光が見える。


 仕事の締め切りが近いというのに、同期は定時で帰っていった。予定があると言っていた。どんな予定だろうと思いながら、退社する同期の背中を見つめた。


 仕事の締め切りが近いというのに、上司は定時で帰っていった。仕事はたんまり残していった。あれは誰がやるのだろうかと思いながら、退社する上司の背中を見つめた。


 僕には予定がない。確かに予定がないから仕事ができる。


 でも、予定が無いわけではない。予定を入れていないのである。予定が無いのと予定を入れていないというのは全く違うではないか。仕事の締め切りが近いから入れていないのである。


 でも、おかしい。締め切りが近いといって、もう3ヶ月くらい経過している気がする。毎日締め切りが近いと言っている。うわ言のように、締め切りがー締め切りがーと、息を吐くように口から出てくる。


 そうか。これは、上司のうまい作戦なのである。小刻みに締め切りを設定することによって、人間の焦燥感とともに危機感を奮い立たせるのである。ちなみに、ニンジンなど一つもない。あるのは、締め切りである。締め切りでやる気が出る僕は、変態かもしれない。


 このままいくと僕は一生予定を入れられない気がする。上司にうまいことやれていることに、文章を書きながら気がついた。ブレイクスルーを取りあえず待つことにしよう。


 ワークライフバランスの真実は、実に愉快である。


 誰かのワークライフバランスのために、誰かのワークライフバランスが犠牲になっているのである。


 誰かが犠牲になって、次は自分が犠牲になる。そして、誰かが犠牲になり、次にまた自分が犠牲になる。この繰り返しがたぶん理想なのであり、お国の人たちもそれを理想として働き方改革をしているに違いない。本来は、負担をみんなで手を取り合って愉快に頑張るのである。


 でも、現実は違う。誰かが犠牲になって、そのまま犠牲になりつづけるのである。

 

 抜け出すには、目が透き通っている新人を騙して身代わりにするしかない。しかし、結局犠牲になり続ける人間はそもそもがいい人なのでそれはできない。そして、できなくてそのまま新人に舐められるのである。


 定時で帰れず、残業ばかりさせられる会社はブラック企業と言われるらしい。


 一方で、残業が無く定時で帰れる会社がホワイト企業と言われるらしい。


 僕が思うホワイト企業は、自分をしっかりとした意味で必要としてくれている企業のことだと思う。誰かから必要とされる人間でありたい。

 

 しっかりと責任を持って働いている人たちが評価される社会になってほしいなと思う今日この頃のなのでした。

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