表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/152

愚痴を言うことの本質は、人のせいにしているだけにすぎない

 彼女は言いました。


「井上くんは、私に対して何でも言い過ぎじゃないの」


 俯きながら僕に向かって言い放ったその言葉。僕は深く考えた。


 その口調は、当たりがキツい感じで、要は怒っている。


 でも、本当に怒っている人に対して「私に何でも言い過ぎじゃないの」と言うだろうか。



 時は少し遡る。

 

 基本的には彼女は愚痴が多い。


 会社の愚痴、友達の愚痴、恋人の愚痴・・・。口から出てくる言葉の大半は愚痴だった。


 僕は、彼女の愚痴をニコニコと聞く。別にそれが嫌だったわけではない。その愚痴すら楽しかったからだ。


 でも、彼女はその愚痴を聞く僕の姿も気に食わなかったらしい。


「首を縦に振って、体を揺らせばいいと思っている」


 いよいよ僕はどんな風にリアクションをすれば良いのかよく分からない。ただ、内心、少し笑ってしまった。


「井上くんて、つまらないよね、あと本当失礼」


 さすがの僕も、我慢ができなかった。


「つまらないとか、失礼なやつとか。別に言われること自体は構わないんだけどさ。君は、なんでそんなに偉そうなの?なんでもかんでも人のせいにして。自分は悪くない、自分は悪くないって自分に言い聞かせて。そんなに自分が大事なの?僕のせいにするのは勝手だけど、それ以上言われるのは我慢できない」


 僕は、彼女に向かって言い放った。すると彼女は黙った。そして、彼女は僕に別れを告げて、人混み中に消えていった。



 しばらくして、僕は彼女に再会する。


 彼女は、小綺麗な格好をして、友達と一緒に薄暗い飲食店の椅子に座っていた。


 僕が、席に着くと彼女は僕に対して冷たい視線を送る。他の友人は僕を温かく迎えてくれた。


 たわいもない会話が続いたあと、彼女は言った。


 「井上くんは、私に対して何でも言い過ぎじゃない」


 実はこの言葉。その日だけで4回くらい言われる。うつむいて。僕に視線は合わせず。


 

 ひどいことを言ったなと、しばらくして思った。


 でも後悔はなかった。


 彼女とこれから仲良くやっていくためには、この言葉は必要だったと今は思っている。


 その日は、友達と合わせて、僕に対する悪口とかダメだしが本当に多かった。


 女性が男性に対してダメだしをするのはどういう心理なんだろう。ポジティブに考えると「自分色に染めたい」とか「自分のことをもっと見て欲しい」とかになるのだろうか。ネガティブに考えると、ただムカつくだけなのだろう。


 ある会話の際に、彼女は、自分が嫌いな人に井上くんはそっくりだと言った。


 僕自身はまったく似ていないと思っている。付き合っている人がいるのに、他の女の人と食事して、甘い言葉を囁くような最低の男ではない。


 そういう風に言ったのは、彼に似ているのであれば僕を論破できると思ったのだろう。


 そして、彼女が僕に言われた言葉を正当化できると思ったのだろう。


 その嫌いな彼は、女の子を自分色に染めたがる男だった。


 あれは、しないほうがいい、こうしたほうがいい。俺はね、俺はね・・・


 僕が、彼女を自分色に染めたくて言ったと認識したかったのだ。


 僕は決してそんなことはしない。むしろ、言い方も問題あるかもしれないが、全く興味がない。


 他人がどのようにしようとも、その考えた方、仕草、趣味嗜好はその人自身だから。僕は彼女を操作しようとはしていない。


 僕は似ていないと言ったのだけれど、彼女は「似てる」の一点張りだったので、話は進まなかった。



 愚痴を言うことはいいことだと思う。気持ちはすっきりするし、ストレスを溜めないからだ。


 でも、ある程度までいくとそれは、単なる現実逃避である。


 愚痴は基本的には他人のせいにしているにすぎない。


 他人のせいにして、自分は悪くないと逃げていることにすぎない。


 これでは、自分にとっていいことなんて一つもない。


 愚痴ばかり言って、人のせいにして。彼女はいつまでも人のせいし続け生きていくことになる。


 それに僕は気づいて欲しかった。


 まぁ広義に捉えれば、彼女の嫌いな彼と言っていることは同じかもしれない。基本的に、不満を言う行為は自分に合わせて欲しいと言っていることに等しい。


 でも、僕は彼とは違う。


 本当に大切だと思う人には、時として嫌われることを覚悟で言わなければならないこともあるはずだ。


 ただ、今思うことは。



 次会えるのかな。。。(言っておいて、後悔中である)



 でも、なんで彼女は何回も「私に何でも言い過ぎじゃないの」って言ったのだろう。


 こればかりは、彼女に聞かないとわからない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ