浦島さん、凹む。
更新があ…推薦落ちたけど、一般頑張ります。小説も作者も、応援よろしくお願いします。
「…はあ。」自分自身が嫌になる。過去の人を引きずって何がしたいのか、自分でもよくわからない。自惚れではないけれど、あの二人は私を好いてくれている。それなのに、他の人のことを考えているのは、失礼だ。けれど、それでもー
「裕が、好き…」
ここは、海の底。海のその声は、思い人に届くはずもなく、むなしく響くばかりだった。座り込み、考える。そして見たくない顔を頭の中で見る。嫌な気分だ。結局反対側を向いて歩き出したつもりで、足にツタが絡まったみたいに、そこから動き出せずにいる。自分は………………弱い。
そんな海に、声がかけられた。
「…海?」
「!」
思わず海は飛び上がった。珍しく新太が、焦る。
「わ、悪かった!あんなことして……本当にすまない…」
その言葉に、海ははっとした。
(私、とんでもないことを……!)
「え!?う、うん!ぜぜ全然、平気だから!」
「でも、海が好きなのは本当だから…。それは信じて欲しい。」
「……………うん。……」
好きじゃない人の言葉で、ドキドキしてしまうのは、きっといけないことなんだと思う。いけないことなら、それを止めるスイッチでもあればいいのに。
「あ!海ちゃー」
「すみません!…少し、一人になりたいんです。……」
乙の言葉を遮り、海は自分に用意された個室に入っていった。自分らしく、なかっただろうか。
周りはテレビで見るような海。もしも私が魚であれば、こんなに悩まなくても済んだだろうか。疑問が止まらない。
(いや…違う。)
魚にだって、心はある。新太や乙さんも、人間ではないはずだ。ー彼らにも、心がある。
(早く、一ヶ月経ってくれたら…)
ふと、思って、「どうして今まで、その事を忘れていたんだろ?乙さんは、一ヶ月経ったら元の場所に戻してくれるって言ってたのに…」
(そうか、それなら一ヶ月待てばいいだけだ。)
こんな自分を好いてくれている二人には申し訳なく思ったが、今の海にとってそれが最良の答えだった。
胸のどこかに、小さな痛みを感じた。
「…海、なにしてんの、こんなとこで。」
「裕……?」
「なんで疑問形?…いくら俺でも、傷つくわー…」
「ご、ごめん。裕。迎えに来てくれたんだ。」
裕は少し間を開けて、答える。
「…あー…ちょっと、話があって。」
いつの間にか、裕の後ろに女子高生が立っていた。
「裕…その人……」
「海、ごめん。…俺、他に好きな人できたんだ。…今日は、それを話にきた。…じゃあな、海。」
裕は、その女子高生と一緒に歩いていく。海は追いかけるが、どうしても追い付かない。
(裕……!私…私を…!)
「置いていかないで!」
「…大丈夫?海ちゃん?」
気がつくと、すぐ側に乙がいた。そして…
「でも、俺は積極的な女の子、好きだけど。」
乙の手を、握っていた。
「…っっごっごめんなさい!!」
海は恥ずかしくて、ソファーに顔を埋めた。
(そうか、私自分の部屋に入って、そのまま…)
「でさ、裕って、誰?…俺というものがいながら、かわいい顔して酷いんだね、海ちゃん?」
「私と乙さんはそういう関係じゃないでしょう…………裕は、………友達です。」
乙は、不適に笑った。
「嘘だね。ボーイフレンド一人に、あんなに感情移入しないよ。…それに、そういう関係って、何?期待してるの?」
低い声が、耳に響いて変になりそうだった。海は、カッと赤くなる。
「別に……期待とか…全然………ないですから。…申し訳ありませんが、出てってくれま」
「そんな顔しておいて、俺に気がないとは言わせないよ?」
言葉を遮られ、上に乙が被さる形になり、海は逃げ場をなくしてしまった。
「っ退いてください!」
海は、必死に抵抗するが、全く歯が立たない。乙は状況に反し優しく笑う。
「大丈夫。海ちゃんが俺を恋愛対象として見てくれるまでは、何もしない。ただ」
乙は海を優しく抱き締める。
「怖い夢で泣きそうな女の子を、放ってはおけないからね。驚かせたね。ごめん。」
そう言ってから乙は何も言わず、ただ海の頭を優しく撫でながら、しっかりと海を抱き締めていた。
「海、大丈夫かな。いや、俺が心配するほどのことでは…いやでも…!」
彼、亀瀬 新太は海の部屋の前で、行ったり来たりを繰り返していた。
(くそ…あいつが来てからと言うものの、調子が狂う……)
(「新太……あなたは私を、一生愛してくれる?」)
(「聞くまでのことか?それ。」)
(「ふふ、女はね、愛を求める生き物よ。それに…お腹のこの子のためにも、愛のない人とは、一緒にはいられないもの。」)
(「俺の子ではないんだけどな。」)
(「仕方ないでしょう?…私だって、間違えたりもするわ。でもね、今、私が好きなのはあなたなのには、変わりない。」)
(「俺もだよ。楓。」)
「でも、あいつは…」
(「楓!駄目だ!俺はあんたまで失いたくない!」)
(「これも、母としての責任よ、新太。あの子が逝ってしまったのなら、私が側にいなくては。」)
(「嫌だ…やめろ……」)
(「…さようなら、新太」)
(あいつは…楓はそう言って、死んだ…この海で。…だからこそ)
「好きになった人を、もう失ってたまるか!」
そう言って新太は、思いきって戸を開けた。
「海、大丈ー」
「あ、亀瀬くん、どうもー☆」
なぜ、乙がいる。そしてその薄汚い腕に抱いているのは…海。
「あー、何もしてなぐふおっ」
「海に…触ってんじゃねーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
その後、寝ている間になぜか部屋が荒れていることに事が終わってから気づいた海だった。
さてさて、久しぶりの登場に、お忘れになられている方がほとんどかと思われますが、語り手の梅子、と申しまする。以後ともよしなに。
さあ、何だかんだで振り回される海は、お気づきになられていないようですが、もう4日ほど経っております。海は、果たしてどちらを選ぶのか、はたまた、選ばないのか。
本日は、これにて失礼いたします。
乙さんが実はお兄ちゃん系でした……Sですが。