浦島さん、惚れ症。
少々エロくなった。
苦手な方はUターンで。
鏡よ鏡、世界一惚れっぽい子はだーれだ?
(私です…)
海はあれから、昨日の出来事を思い出しては、にやけ、そして自己嫌悪の繰り返しだった。
死のうと思うことはなくなったが、苦悩は続くばかりだ。乙と新太から告白を受け、それを自分なりにきれいに断ったつもりだったのだが…
乙は、なぜあんな提案をしたのか。本当にここにいてほしいなら、もっと…
「って、アホか!このまま一ヶ月何もなければ、元の世界(陸)に戻れるんだし!」
「独り言なら、もっと小さくていいんじゃないの、海。」
そう言ったのは、新太だった。
「一ヶ月何もなく過ごせるとでも思った?」
「当たり前でしょ!」
新太はじっと海を見つめる。
「何よ…それ位できるわよ。ば」
人差し指に、言葉を遮られる。
「いーや。」
「!?」
「無理だよ。俺がいるから。」
耐えきれずに海は視線を逸らし、逃げ出した。
すぐ、捕まってしまった。逃げようとしても、両方の手首を掴まれ、動けない。
そのまま、壁に追い詰められる。そして耳元で、囁き。
「絶対、俺のものにするから。」
ぺろり。耳をヒヤッとした感覚が襲う。
「っなにす…んんっ」
首元に吸い付かれ、顔が真っ赤になった。
「…印つけるだけのつもりだったのに…お前が悪い。」
「!?はあ!!?」
「だーめだよ。新太くん。紳士たるもの、欲に負けちゃあ。」
声のした方に目を向けると、乙が立っていた。
「あんたは部外者です。関係ないでしょう。」
ニコッと、乙が笑う。
「ざーんねん。関係あるんだよ。これが。だからさ」
乙は突然、新太にを殴り付けた。
「先にいただきまーす。」
そういうと、海の頬にキスをした。
海はあまりの驚きに叫んだ。
「うわああああああああああああ!?なにやってるんですか!!」
「前菜ごちそーさま。メインディッシュももらうね。」
くいっと顎を引かれ、顔を近づけられる。
「口は開けてねー」
「え!?」
「なに調子のってんだこらああああああ!!!!!!!!!!」
さっきの仕返しとばかりに、乙は吹っ飛ばされた。
「大丈夫か!!海!」
「あ、…うん。まぁ……」
新太が、倒れこんできた。
「ちょっ」
「良かった…無事で……。」
その一言で、海はあることを思い出してしまった。
ーあの時は確か、どっかの橋の上にいて…
「きれいだね!空気もおいしい!ねっ!裕!」
「そうだな。あんま乗り出すなよ。危ないし。」
「心配してくれるんだ。珍しい。」
「ま、恋人だしな。」
「…………」
「何?どうした?」
「!何でもないです!あははーきれいだなー」
「バカ!危な…」
橋から、落ちそうになったとき。
落ちるすんでのところで腕を掴まれて助かったんだ。その時、彼は言った。
「良かった……無事で……。」
「…離して!」
気付けば、新太を振り払い、走っていた。
(私は、まだ、裕のことを…引きずってるんだ。)
今まで、死のうとしていた理由。それが裕だ。
海は自分が立ち直っていないことに、初めて気がついた。
どこか、新太と乙の行為を受け入れてしまっていたのは、きっと……
(私は、裕の代わりを、私のとなりに空いた席を、埋め合わせしようとしていたんだ…)