浦島さん、椅子とりゲームは悩みの種。
「勝手に話進めてもらっちゃ、上司として…ううん、違うね。男として、困るんだよ。新太くん。」
乙が、真剣に話しているのが、顔を見ることができなくても分かる。
でも……
(私は、急にそんなこと言われたって……)
まだ、私は裕のことを……引きずっている。
そして変かもしれないけど、好きな人からじゃない告白に、喜んでしまっているのも事実。
だからって…
「あの…」
二人が、海の方を見た。海は気持ちを落ち着かせる。
「急に…二人のどっちを選べだとか…言われても、無理ですから!」
しばらく、場がしんとなる。
(分かってくれた…よね?)
乙が最初に沈黙を破った。
「じゃあさ、海ちゃん。こーしよーよ。」
「?」
「これから1ヶ月、考える時間あげるから、その間に選ぶこと!」
「ええ!?」
乙がニヤリと笑う。
「もし選ばなかったら、君には元の世界に帰ってもらう。」
「それならー」
言葉を遮るように、乙が耳元で囁く。
「でも、帰る気になんてさせてあげないけど。」
(ち、ちちちかいいいいいい!!!!!!)
海は顔から湯気が出てきそうなくらい赤くなる。
突如、腕を引かれた。
「乙さんのエロ空間に、俺の花嫁巻き込まないでください。もうお若くないのに…見苦しいですよ?」
亀瀬はそう言って海を抱き締めた。
「君、そんなこと言ってるとモテないよ?」
乙は笑っているが、目は笑っていなかった。
ぞっと背筋が寒くなるほどの冷たい笑顔。
まずいと思ったのか、亀瀬は「捕まってろよ!」と言って、海を抱き抱えた。
海はその瞬間、怖いとかどうとか、どうでも良くなっていた。
なぜなら、
(人生初姫抱っこおおおおおおお!?)
ちらっと、亀瀬の顔を見た。
(顔整ってるなあ…王子様というよりは、皇太子みたいな感じ…)
無意識のうちに、顔に手が伸びていた。
ちょん、と指先が顎に触れた。
「うっ」と亀瀬が声を漏らした。
そしてその声で、我にかえる。
(な、なにやってんだ、私は…………!!)
海を抱えて走る亀瀬は、少し苦しそうにくす、と笑った。
「何? 」
「な、何でもございませんでないですよ!!」
「どっちだよ」
(言えるわけない…あなたに見とれてました、なんて…)
絵を入れたい…けど、調べてもよくわからなくなっていくだけなので諦めた。