浦島さん、亀と揺れる心。
浦島 海。職業は使用人。……………
(…なわけないっ!……)
さあさ、今日の浦島さんは、転職(?)したそうで。何が起こるか、わしにはわからん。代わりに、見届けてくんろ。頼んだぞい。
「なっんで……」
「ん?」
「華のJKな私が、こんな目にいいいいいいいいいいいいいぃー?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
その言葉をあっさり切り捨てる声。
「死に損ないが、何言ってんだよ。」
ぐっと、目をつり上げる。
「…はぁ!?あんたが引き留めたんでしょ!私のせいじゃないし!!」
しかし相手は淡々としている。
「じゃあ死ねば?でもここで死なれるの、迷惑だから他行けよ。」
海のなかで、何かがプツリと切れた。
「………」
「?何…」
突然海は、ぼたぼたと泣き出した。
焦りだす亀瀬。
「だっ…えーっと………?うーん、あーっクソ!!」
その瞬間、がばっと抱きつかれた。
混乱の順番が、海に回ってきた。
(え…えーーーーーーーーーー!??!?!?!?!?!?!?)
「…泣き止んだか?」
まだ頭が整理できず、小さく頷く。
「そっか」
と、亀瀬が急に頬を赤らめた。
「あっ!えーと、……そう!まじないだ!!これにはまじないの効果があってだな…決して何もないからな!」
同時にぱっと海と距離をとる。
(あれ…なんか…寂しいな…)
「さぁ、仕事しろ!お前は俺のパシリだ!死なれたら………困るから。」
まだ少し恥ずかしそうに、亀瀬は言った。
「新太」
彼の名前を呼んでみた。なんだか、ほわほわする。
「何?」
「ありがとう」
彼はいつの間にか、いつもの調子を取り戻していた。
「良くできました、とか言ったらいいわけ?」
でも、気づいたんだ。
彼の口調の裏にある、優しさに。
自然と、笑いが漏れた。
「ほんと、亀瀬って亀なんだね。」
むっとする亀瀬。
「最初に言っただろ。…それに」
亀瀬の手が、海の前髪をかきあげた。
おでこに、柔らかい感触がした。
海は真っ赤になって「何!?」と叫ぶ。
「決めた」「?」
「今日からお前は、俺の花嫁だから。ご挨拶」
(こ、こいつ…どんな顔して言ってんの…!)
でも、嫌じゃない。
「あのー、雰囲気いいトコ悪いんだけど、」
不意に手を引かれ、振り向くと、乙だった。
「僕の海ちゃん、とらないでくれる?」