†SUMMERVACATION[ONE]
「あっち〜!! 何で夏休みやのに学校行かなあかんねん!!」
今、愚痴を零す光咲に相槌を打ってくれる人はいない。
夏休み前の学校
「は〜い。全部テスト返って来てるな!明日から先生も楽しみの、楽しい楽しい夏休みに入る訳なんだけど!……」
クラス担任の亜由が夏休み前の連絡をしているその中、
「祠園、どうやった?テスト。」
とさっき帰って来たテスト用紙を持って、光咲が聞く。
「英語は、98点で数学は、86点。国語は難しかったからね76点しか取れなかったよ。光咲は?」
さすが入試を3位通過しただけの事はあるなぁ
と光咲は思いつつ聞いたことに後悔している。
「英数国合わせて8点。詳しい点数見るか?」
「…いや、やめとくよ。それより、この点数じゃ夏休み減るんじゃ……。」
涙目で頷く光咲を見る。
「あんた馬鹿ね。中等部の時から、遊びほうけるからよ!罰よ罰!!」
と優子が後から【COREs】をクルクル回しながら話している。
「でも、このままじゃ皆で海に行けないんじゃ…」
琴浜が言うとクラス中から痛い視線が光咲だけに刺さる。
馬鹿な!? 光咲のくせに何故、クラスのアイドル琴浜ちゃんと海に行けるんだ!! ←琴ちゃんファンクラブより
あいつ!! 僕の優子様と海なんて、良い度胸だな!? 掛かってこいゴルァ!! ←優様ファンクラブより
ミサた〜ん!あんな男と行かないで〜!←ミサたんファンクラブより
何なのあいつ!! 祠園君といつも一緒にいて!! もしかして、あの馬鹿!! ○モ!? ←峯君ファンクラブより
あんた!! あたしの話聞く気あんの!?←亜由
いろんなファンクラブや先生からの熱烈的な厳しい視線を感じながら机に突っ伏している。
「…って事だからあまり羽目を外さないようにね!それと、1名だけ点数が得に悪すぎるため……担任がその生徒に特別補講するように学年主任から言われました!! 私の楽しい楽しい夏休みを潰してくれた子わ!!」
「阿保やな〜。誰やろな?夏休みになってまで学校に来る奴は。祠園は、誰やと思う?」
と光咲が『夏休み』と言う単語を聞き嬉しそうに祠園に話し掛けている。
「光咲君!亜由ちゃんが睨んでるよ!」
「ホラッ!静かにしなよ!見られてるって!」
教卓を手で叩き光咲を指差す。
「ボケ!! 光咲!! お前じゃ!お前!! お前が、夏休みの特別補講対象者になってんの!! それをグダグダ周りとしゃべりやがって!! お前なんか、死ね!逝ね!消え失せろ!!」
教師とは、思えない暴言にへこんで………いる訳が無い。
何で俺が……俺の夏休みが!!
いや、少しへこんでいた。
「という事だから、他の人は関係ないから存分に楽しみな!! 以上!解散!!」
起立・礼。
亜由は、光咲の所まで来て、
「光咲。あんた明日、教室に8時登校ね。昼飯と腹減るんだったら晩飯代くらい持ってきときな。」
補講の時刻を告げていった。
「亜由ちゃん!! マジ?」
「マジだよ!! マジでやるからね!! 朝から夜の9時までコース。それだと、夏休みの3分の1潰れる位で済むんだよ。それとも、朝から夕方まで毎日の『いつもの学校の授業時間プログラムコース』土日休日無しとどっちが良いんだよ!! あたしは、嫌だよ!! 毎日、あんたの顔見るのなんか!!」
気合いの入ったスペシャルコースを二つも聞かされて今にも倒れそうな光咲である。
「だから、あんたちゃんと来なさいよ!!」
こうして、悪夢の夏休みが始まった。
・
・
・
・
「はい!そこ違う!!やり直し!!」
「違う!何回言えば解るの!!」
「これも違う!!」
ずっと、これの繰り返しだ。だが、少しずつは光咲も成長していった。間違う数も減り。内容も理解できて来た(と思う)。
そんなこんなで2週間半ぶっ続けで、誰ともまともな会話が成立せず勉強だけをした。
「ねぇ、兄さん。明日のお昼何がいい?」
「……ぬぼ!!」
こんな感じだ。
美咲も初めは驚いたが今では、
「わかった。いらないならお金ここに置いとくね」 と、こんな感じに成り立って(?)いる。
From:琴浜
to:光咲
sub:頑張って
明日、特別補講終了テストですよね。頑張って下さい!
From:光咲
to:琴浜
sub:Re:頑張って
ぬぼ!!
光咲君。これは、何と訳せば……と困る琴浜。
From:優子
to:光咲
sub:無題
頑張れ
……………………
何で返ってこないのよ!!
From:晴夜
to:光咲
sub:頑張ッス!!
頑張っす!!
From:光咲
to:晴夜
sub:Re:頑張ッス!!
ヌボー!!
先輩、壊れたかな?
・
・
・
・
「よし。合格点ですね。お疲れ様でした。藤塚先生、光咲君。気を抜かないでこのまま頑張って下さい。」
学年主任の言葉を聞いた途端2人は、その場に倒れた。
グガーーー!!
寝ていた。それから、1日丸々寝ていて起きたときは朝だった。
「あれ?テストは?」
あの時の事は覚えていない。どうなってんだ、こりゃ?
「おはようございます!兄さん、よく寝てましたよ。テスト、合格出来て良かったですね。」
「ッエ!? 俺、合格出来たんか?……よっしゃー!! これから遊び放題や!!」
兄さん、普通に話してる!!
美咲は、兄が普通に話していることに驚き嬉しかった。
「補講が終わった事ですし、どこか遊びに行きませんか?」
「ん?そうやな!! 遅れた分の夏休みを取り戻す十倍くらいのペースで満喫せなあかんしな!!」
やった!!兄さんと後の夏休み2人っきりだ!夏休み出遅れた分、いっぱい甘えるんだから。
と美咲が嬉しさの余り、顔に出ているのを見る光咲。
こっわ!!何を考えとんねん!
ピンポ〜ン♪
チッ!!
美咲が舌を打った。
「はいは〜い!ちょっと待って下さ〜い!」
家のチャイムが鳴り美咲が、インターホンと【COREs】を繋ぐ。視界が、インターホンのカメラと繋がった。
『は〜い!優子さん、琴ちゃん、晴夜君!いらっしゃい。玄関開いてるんで入ってください。』
『それじゃ、お言葉に甘えて。』
ガチャッ! お邪魔しま〜す!
「いらっしゃい。優子さん、琴ちゃん、晴夜君。」
2階から下りて来た。
「お久しぶりです!美咲ちゃん!」
「お久しぶりッス!美咲先輩!」
「おひさー、美咲!光咲、補講終わったって聞いたから海に行く予定を立に来たんだが……光咲は、どうした?」
「兄さんは、今部屋で着替えてますよ。もう少しで、下りてきますよ。リビングで、ソファーにでも腰掛けてて!」
玄関で立ち話をしていた2人をリビングへ入るようにすすめる。
「へ〜。案外、綺麗にしてるのね。」
ソファーに腰掛けながら、優子が部屋を見渡す。
「そうですね!私も見習わないと。」
琴浜も見渡している。
「そうですか?そう言ってもらえると嬉しいです。」
美咲ったら、さすがに文武両道でも家事は出来ないと踏んでいたのに!
美咲ちゃん!!さすが、良きライバルです。
ふ、2人の目が…怖い。早く先輩、下りて来てくれないかな〜。
リビングの空気が重くなりだした時、ふと思った。
先輩、遅すぎないか?
「あの〜、先輩遅すぎません?」
「そういえば!私、呼びに行ってきます。」
「私も行ってきます!!」
「私も行くわ!!」
うわぁ〜、余計な事言っちゃったかな。と思いながら3人の後を付いていく晴夜。
トントン♪
「兄さん、入りますよ。」
ガチャッ♪
キヤァー!!
「どうしたの?美咲ちゃん。」
キャアー!!
「ん?琴浜までどうした?」
キャッ!!
「どうしたんッスか?みんなして。……あ〜、先輩?何やってんですか!!」
zzzzz♪
そこには………ズボンを膝まで履きながら、膝立ちでベットに倒れながらパンツの見えたお尻をドアの方へ向けて眠っている光咲がいた。
「もう、先輩!!ケツ出して寝無いでください!!オッサンのケツ見て喜ぶ奴なんかいませんよ!!ってか、お〜き〜ろ〜!!」
ッポ!!
頬を朱色に染める3人。
あ〜、喜んでるのね!この人達は……!
「んあ?皆さんオハヨウゴザイマス!そして、お休み〜。」
「兄さん、早く起きないと……殺るわよ。」
スリッパを足から手に持ち替える美咲。
どうやら、角は見えていないが殺気を感じ取った光咲が跳ね起きた。
「ハッ!ハイ!!お早うございます!!…うわ!何やこの格好わ!…まさか、みんなで俺を!?」
今の自分の状態を見て驚く光咲。
「馬鹿じゃないの?美咲、私リビングで待ってるわ。」
「じゃあ、私もリビングで待ってます。早く下りて来て下さいね。」
「兄さん!私も下りるけど、寝無いで下さいね!晴夜君、すみませんが兄さんが寝ないか見張っててください。」
兄の見張り役として晴夜が撰ばれた。
「解りました。任されます。」
大丈夫やっての!!
と呟く光咲に美咲が、最後にとどめの睨みを利かして下りて行った。
「あ〜、怖い怖い」
「そうですね。美咲先輩が、あそこまで怖いとは思ってませんでした。でも、皆さん下に行ってもらえてよかったです。」
まさか晴夜、お前○モに目覚めたか?
光咲は、顔を引き攣らせながら少しづつ離れていく。
「『メイク』について調べてたことについてなんですが……」
「なんやそっちか〜。」 いや、マジでガチ○モかと……。
「調べてみて、正直驚きました。峯先輩の情報網、すごいっすよ。『メイク』だけじゃなく、企業間や人どうしの対立がほぼ完璧と言っていい程まとめられてました。ここまで完璧だと怪しかったんで、裏を取っ手みたんですけど。全てあってました。」
「それやったら、直接祠園が来たら良かったんちゃうか?」
祠園がいなかった事に気付き晴夜に聞く。
「それなんですが。峯先輩、【MOTHER】で8ヵ所いっぺんにハッキングしてたらしいんです。それで、1ヵ所に脚を残して来ちゃって………。」
いっぺんに8ヵ所!?阿保ちゃうか、あいつ!!
「で、今追われてると!」
「いえ。街中で襲われた時、『メイク』としての能力使えないとキツイらしく……山に篭って追っ手をおびき寄せ、返り討ちらしいです。」
・
・
・
・
ハッ!クチュン!
誰か噂してるのかな? 「でも、あんな下請会社でこれだけ送ってくるなんて正直、この能力は一生使わないつもりだったんだけど……。ここまで、殺さずに肉弾戦で戦ってきたけど、もう僕も正直やばいんだよね。このままじゃ、僕が殺されちゃうからね。この能力を使わないでやるのはキツイんだ。晴夜君、光咲に伝えてくれてるかな?まぁ、説明は難しいと思うけど。………また来た。」
そのとき、回りを囲まれている事に気付いた。
ざっと、20人位が祠園の回りを囲んでいた。
やっぱり、能力を使わない手はないか……。
とたん、【MOTHER】にコードを打ち込んだ。
すると、祠園の口から人が発する事の出来ない超音波を出していた。
それは、人の耳から入り三半規管を狂わし脳にまで届いた。平衡感覚は無くなり地面に何とか倒れる者。酷い者は、耳から血が吹き出している。脳へのダメージが大きすぎ、耐え切れなくなりそして、パンクした結果だ。
使わないつもりだったのに………。あの、脳がパンクする瞬間の音。野垂打ち廻る人の姿。こんな、残虐な能力を作り出した滝宮が憎い。………もう、帰ろう。
森の中を黒い服、喪服を思わせるような服を着た少年が1人帰路につく。
少年の闇と森の中の闇が重なる。自分は、光に出てもいいのかと言わんばかりに………。




