†作戦策略大作戦 後編
そして、次の日も何事もなく日が沈み夜が来る。
「え〜。遅刻は、無いですね。集まって頂いてなにより。
ただ今より【MOTHER】捜索作戦『幽霊さんだったらごめんなさい』作戦を開始します。」
高等部校舎正門、場を仕切っているのは光咲である。
光咲、あんたまで変な作戦名を付けるのね。
と優子が思いつつも声には出さない。
「って!あんたが遅れてんでしょうが!!時間ぐらい守んなさいよ!」
「いやぁ、すまん!って事で今日の目標・目的を発表すんで。」
優子の怒りを受け流し、光咲が話を先へと進める。
今回の目的は、2つ。
学校内の幽霊退治とその原因の探索の2つで、両方共理事長の依頼で受けていた。
理事長が言うに下手に業者に頼むより【GLANCE】に所属している優子や琴浜に任した方が安心らしいとの話だった。
理事長に承諾貰えるように言っておいて良かった。と胸を撫で下ろす琴浜であった。
「では、出発〜。」
合図で進み出す4つの人影は校舎へと消えて行く。
ちょうど、4人が入り終えた後、隠れていたもう1人の追って消える。
「離れるなよ。もしかしたら、ケンゾーみたいな奴が来るかもせえへんからな。俺、そんなん来られても対処でけへんからな!っていうか、助けてねぇ!」
光咲がちょっと本気めに言っているのが聞いていて情けなくなる3人である。
4人は、固まって1階の廊下を歩いている。
そこへ次から次へと出て来る幽霊を倒していく2人と役立たずが2人。
そう、光咲と琴浜である。
「ッウワ!!」
「ッキャ!」
幽霊の突然の出現で尻餅を着く2人を尻目にさっさと歩いていく優子とその後を心配そうに付いていく美咲。
「おい!ちょと、置いて行くなよ〜。さっき、トイレから声が聞こえて驚いただけだろ!!」
「そうですよ!聞こえたんですよ!だから、待ってくださ〜い。」
情けない2人は、走って追い掛ける。
怖がりな光咲と琴浜には刻な場所だった。
「倒しても倒してもキリがないな。…また来た。」
「せやな、やっぱり元を絶たなあかんな。」
「兄さん。それだと原因は何でしょうか。」
「それはやっぱり、【MOTHER】の暴走とちゃうか?悪戯って線やったら学校のセキュリティである程度の物はデリートされてるはずやけどこの量となるとな…」
「そうよね。この量は、以上ね。」
などと話していると琴浜が
「あの〜、話しは変わるんですけど。さっき、学校のメインセキュリティを観てたら私たち以外にもう1人学校に侵入しているみたいです。」
と心配そうにみんなに伝えた。
「なんだって!?そいつは、何処にいるんだ?」
「え〜と、ちょっと待ってください。今、屋上からの映像を送ります。」
4人とも屋上へ向かい廊下を走りながら【COREs】をつける。
「こいつは、誰だ?優子達は見覚えがあるか?」
「何か見たことあると思うけど?何処で見たのかしら?影だけじゃ何とも言いようがないわね」
「そうですね。見たことあるような感じなんですけど…」
「…兄さん!?この人、峰君です!!」
美咲は、叫ぶと。全員美咲のほうを振り向いた。
「何やって!?そうか、何か見覚えがあると思っとったらあいつか!!」
「本当だ!!今、学校の身体測定の時の結果をあの影と比べたら98%同一人物みたい」
「でも、どうして峰君が?」
「そりゃ、会ってみりゃわかるやろっ!!」
光咲の叫びが階段の上まで響き渡る中、最後の階段を駆け上がる。
がちゃっ
「やっぱり来たね!思っていた以上に時間かかったんじゃない?何遊んでたの?せっかくあんなに幽霊出しまくってたのに〜」
「祠園、お前やったんか!なんでまた……」
光咲は、身構えながら。祠園は、笑いながら答えた。
「光咲は、覚えてる? 特殊な脳への信号を抑える過程で【MOTHER】を使っても抑えることが出来なかった実験体を『オリジナル』、抑えることの出来たその他の成功体9体を『メイク』って言われていたんだ。
その1人が僕のお婆ちゃんさ。お婆ちゃんは、【MOTHER】を着けていないと生活が出来ない時の事泣きながらを話してくれたさ。
居場所の無かったお婆ちゃんは、町から町へ転々と場所を変えて。行くところで毎回、村中の人に怪しまれて、体のキズがたえなかったってね。
でも、お爺ちゃんと結婚して幸せになり子供を産んで孫まで出来またんだ。
でも、僕思ったんだよ。『メイク』があんなに苦しんでいるのに失敗作の『オリジナル』がへらへら生きてるのが気に食わないなって。
まぁ、光咲を見てたらその気も失せたんだけどな。」
祠園は、今までの自分の経緯を光咲達に話した。
「でも、何であんたは幽霊なんか撒いてたのよ!」
「正直、今日まで『オリジナル』が誰か目星が付かなかったんだ。でも、幽霊を撒いてれば【MOTHER】の暴走と勘違いして来てくれるだろうと思ってたんだよ。そしたら、光咲たちが来た。サーバーにハッキングをかけてメールを見せてもらってから確信に変わった。」
光咲達は、疲れ果てたのか屋上に座り込んで聞き込んでいた。
「…じゃ、あんたは光咲が『オリジナル』だってわかったのならどうするの?殺すの?」
その会話を聞いていて、驚く3人。
「ッエ!?殺すんですか」
「殺さないで下さい!!」
「ッエ!?俺、殺される予定なんですか?」
その反応を面白そうに見ながら祠園は答えた。
「はっはっは!馬鹿だな〜!いや、僕が馬鹿だったよ。こんなに良い奴を殺そうなんて」
本当は、殺す予定で入ってんけど。まぁ〜良いか。 と一人で納得している祠園を尻目に、
「よかったですね!!本当によかったですね!!」
「兄さんが死ななくて本当によかった〜!」
「俺、殺されなくてよかった〜。」
と泣きまくりの3人。そこへ優子が、思い出したように言った。
「ちょっと待ちなさいよ!いくら『メイク』ってだけであそこまで幽霊を出せるのは以上よ!何かあんた、まだ私たちに隠している事無いの?」
と笑って事の重要性を掴めていない祠園に聞くと
「ゴメンね、優子さん。忘れてた!そういえば、僕が使ってる端末お祖母ちゃんの形見の【MOTHER】でした!だから、ちょっと能力を使う方法も知ってたり」
ッエ!?そうなの!!
さっきまで泣いていた3人は、驚きで口が塞がらない。
しかし優子は、やっぱりか…と言わんばかりの笑みを浮かべている。
「やっぱりな!さて、美咲はどうする?こいつの持っているお祖母さんの形見の【MOTHER】だけ貰って、こいつを葬るか?それとも、仲間にするか?どっちでもいいけど、私のオススメは葬る方かな。」
葬るのはやばいんじゃないの〜。
とか光咲が思っていても優子は、本気でしそうで怖い。
そんな言葉を聞きながら美咲は、慌てて
「葬るのはダメです!!能力も使える事ですし……良ければ、〇*@¥#&∝∂ゎÅ≪ということで皆には仲間になってもらっているんです。そこで、祠園君も仲間になってもらえませんか?」
楽してんなぁ〜、作者は。説明のめんどくさい場面で使う小説・漫画特有の省略術を使いやがって!!
と光咲は、読者さんにしか聞こえない声で呟きながら説明をしている。
「そんな事があったんですか。僕も手伝わせてください!!必ず、力になります。」
そうなんだ、実験で被害を受けたのは『メイク』達だけじゃ無いんだ!
と決心して祠園は、仲間に加わった。
「これで、ミッションコンプリートやな」
光咲は、まだ遊び足りない子供のように
「そうですね。もう、晩いですし。早く帰りましょうか。」
美咲は、みんなを気にかけ
「わたし、もう眠たいです〜。」
琴浜は、眠そうに
「そうね。私も、さすがに疲れたわ。」
そして、優子にも疲れが見えている。
もう、帰ろうとした瞬間祠園が思い出したように口を開いた。
「あっ!!そういえば、みんなに言い忘れていたことが……。」
このタイミングでまだ何かありますか?こいつは!!
みんな呆れ顔で、聞く体制に入った。
「いや〜、ごめんね。まぁ、軽く聞いてて。【MOTHER】は、『メイク』の数しか造られていないってお祖母ちゃんが言ってたんだ。でも、僕の知る限りヤマキに同じく『メイク』の息子さんがいるはずだけど?敵なんだよね?」
…………ッエ?
「おい、祠園!!本気と書いてマジですか?」
「マジなんです。僕の勘から言わしてもらうけど。あいてが実験していた黒幕からして【MOTHER】は、進化しているだろうね。それも、飛躍的に。噂じゃ、軍事事業にもだいぶ、手を出しているみたいだから【MOTHER】もそれようにスペックアップされてるってと思うよ。」
ちょっと忘れてたどころの内容じゃないやろ!!
と腹のうちでは、思っている光咲も呆れ果てて黙って歩き出した。
それについていく3人。
「ごめんごめん!!本当に忘れてたんだよ。だから、置いてかないで下さ〜い」
祠園は、光咲達の後を走って追い掛けた。
校門での別れ際、祠園は今回の種明かしをしてくれた。
【MOTHER】で、学校のセキュリティにハッキングをかけて。学校から、幽霊が出るようにしたこと。
倒しやすいように、正面からの攻撃だけにした事。 【MOTHER】の力をフルに使えば、もっと簡単に殺せたこと。
不気味感を出すために、音は出ないようにセッティングした事などを聞いていた。
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ッエ!!
光咲と琴浜は、驚いた。
「ちょっと、待てよ!! トイレから聞こえたあの声は何やねん?」
「そうですよ!!あれのせいで尻餅付いちゃったじゃないですか!!」
2人は、怒りながら祠園の首根っこを掴んでいる。
「っん?僕は、言葉を話す幽霊なんか出してませんけど?」
光咲は、噂だったら良いと思いながら聴いた。
「今度も本気と書いてマジですか?」
「マジなんです!!」
光咲は、失神寸前でフラフラと歩き出した。
「じゃあ、あの時の『五月蝿いなぁ』は、誰が言ったんですか?」
「それは、本物の幽霊じゃないかな?」
キュ〜〜〜
と訳のわからない音を立てながら琴浜が、倒れていく。が、優子が上手い具合に受け止めた。
「今日は、ここで解散だな。私は、琴浜を家まで送ってくるよ。」
「はい、わかりました。兄さん、帰りますよ。では、また明日。」
光咲を揺すりながら連れて帰る美咲。
「じゃあ、僕も帰るとしますよ。では、また明日。」
みんなそれぞれ自分の家に帰っていった。
「どうよ〜。俺以外の『メイク』の力を持つ奴を見たの初めてだろ?感想は?といっても、今回は力の一部も見れなかったけどね」
暗闇の中、液晶に映る旧友達を見ながら男女2人が話し合っている。
「そうですね。まず、佐藤さんよりカッコイイ事がわかりました。」
「おいおい!!俺って、あいつにまで負けてる!?」
「冗談です……3割くらいわ。そんなに、落ち込まないで下さい。………………『メイク』の事ですが、何とも言えませんね。能力が、解らないために。」
落ち込んでいる佐藤を構うのが、面倒臭くなったのか無視して話を進めた。
「そうだな。まだ今は、保留にするってシェリーさんに伝えておいて。」
「わかりました。」
「んじゃ、ミーティング終了!ちゃんと、伝えておいてくれよ。」
わかってるわよ!ハゲ
と心の中で思いつつも上司には、逆らえない自分を虚しく思う少女であった。
「ふぅ〜、やっと仕事が終わったぜ。役員のオヤジ達、話が長いんだよな〜。それで、この時間か。俺も行きたかったな。」
ホテルの前に佇むスーツを着た少年が立っている。
後を追って40歳位の男性が来た。
「副社長。車をこちらに廻しておりますので少々お待ちを。」
「いいよ。歩いて帰れる距離だし。それじゃ、山崎さん!父さんには、帰ったと伝えておいてね。」
と言い終わると、少年は歩き出した。後ろ姿は、おやつを食べ逃したようにどこか淋し気に見えた。
月が眩しく寂しげに輝くように……。




