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†朝ソシテ夜ヘ 下

 夜の屋上。

 二人の影が見える。冷静に問う健三に、怒りを内に光咲が佇む。

 「光咲は、知ってるか?『オリジナル』の事を。 その『オリジナル』が、最近復活した事を。それを、大企業が追い求めている事を。」

 「ああ、知ってるぞ。 一時、ネットで話題になったもんやろ?

 それとこれと、どんな関係があんねん!友達賭けてまででもそれが、欲しい物なんか?」

 光咲が答え終わった頃、健三は、手を微かに動かした。

 その光景は、不気味で光咲は身構えた。

 健三は、コンマ数秒の内にゾンビと幽霊ウイルスを数十体【REAL】に出現させた。

 「いや、巻き込んで悪かったと思うよ。どれだけ、『オリジナル』が物だったら良かったか。」

 光咲は、驚いた。それは、思っていたものとは違ったからだ。

 幽霊達が迫ってくる。

 「ッちょっと待て!『オリジナル』って【COREs】の元来。【COREs】の元になった機械【MOTHER】の事と違うかったんか!」

 光咲が、聞き返しながら幽霊ウイルスを撃っていく。



 大企業ヤマキ電脳株式会社が、『マッドサイエンティスト』 滝宮の大脳の研究結果から作り出した脳を自分の意志で操作し、人外な能力を目覚め指すための装置。

 【COREs】の原型となった機械。

 その装置を【MOTHER】と呼ぶ。



 「あぁ、確かに【COREs】の原型の機械【MOTHER】は有ったのは事実らしい。 でも、それじゃ無かった。それは、【MOTHER】を使わなくても人が使用できる脳の共要範囲を超し。人外な能力に目覚めた一人の人を指す固有名詞。そう、お前が『オリジナル』だ。」

 光咲は、驚いた。まさか、ネットに流れていた噂は本当で。『オリジナル』は、人間なのだと言う。

 しかも、その人間が自分だとは。

 思いも寄らない解答で、光咲の思考回路が止まる。

 「不思議だとは、思わなかったかい?扱ったことの無い【COREs】の能力を使いこなせたり。【COREs】を使わなくても【REAL】を見れたりしなかったかい?」

 確かに、光咲には身に覚えがあった。

 「でも、昔の記憶はちゃんと有んぞ。産まれたときからずっと……産まれたときから!?」

 おかしい!光咲は、そう思った。

 確かに、子供の頃の思い出等は、あやふやだが覚えているのが普通である。

 しかし、普通覚えているはずの無い赤ん坊の頃の思い出が鮮明に欠ける事なく覚えている。

 それが異常な事だ、と光咲には解った。

 光咲の攻撃が止まる。


 「さぁ、悪いが『オリジナル』捕獲させてもらう!」

 健三は、さっきとはまた違った種類のゾンビを出現させた。


 (そうか、俺は人外な生き物で『俺』じゃ無かったんか……!!それやったら、『安藤家』は俺を知った上で家族として迎え入れていたんか?

 いや、おかしい。親父が『オリジナル』を復活させたら、あの人の事や、研究所に連れ込んで研究をするはずだ。

 それに、こんな未知な生物の『記憶』を操作して脳を潰してしまっては元も個も無い。誰なんや、『俺』を復活させたのは。)

 と考えながら光咲は、攻撃を受け流していた。


 ッツグァァ!?

 光咲の頭に激痛が走る。




 どこか暗い場所、一人の日本人の男性と外国人の女性が目の前に立って話をしている。

 「……これ以上、実験は続けられない。残念だ。 諦めよう、シェリー……」


 場面が変わる。

 研究所と思われる部屋の中。リーダーらしき男性が見える。

 「…これは、どういう事だ!?こいつ、何故【MOTHER】を付けずに制御しているんだ!化け物だ!!捕まえろ!処分する!!……」 (ここって、どっかで見た事あるような?)


 「……何故殺せない!仕方が無い、殺せないのなら、捕まえろ!また、冷凍保存だ。……」



 また、場面が変わった。 暗闇の中、一人の少女が何か言っている。

 (ッ!?あいつが俺を?) 「さぁ、『オリジナル』目を醒まして。そして、私を助けて。この世界を助けてる糧となって。」

 そこに立っていたのは、サングラス型【COREs】を着けた美咲だった。

 そして急にまた、頭に激痛が走った。




 ッツグァァ!?


 「ここは?」

 「さぁ、悪いが『オリジナル』捕獲させてもらう!」

 (戻ったのか。俺は一体……。)


 ゥヲヲヲ!!

 光咲は、吠えた。



 そう、昔を知ってしまった悲しみを消すため。


 そう、自分が必要とされず厄介払いで殺されかけた『物』だという事実を消すため。


 そう、友人にまで裏切られた怒りを消すため。


 そして、助けを求められていた事すら忘れ。助けてあげられなかった無力な自分を消すため。



 光咲の遠吠えが響き終わった後には、光咲は変わり果てていた。

 感情の無い人、人の様な人形に成り果てて。

 それを肌で感じた健三は、身震いをした。

 まるで違う存在。

 『オリジナル』としての人格。

 恐い。 健三は、そう思った。


 『さしぶりやなぁ、こんな感じは。何十年眠ってたかなぁ?あいつらにやられて以来やからなぁ。

 ックックック!お前か、俺を呼んでくれたんは。お疲れさんやったなぁ〜。』

 『オリジナル』が【COREs】を外しながら健三の下へ跳躍した。

 健三に向かって打撃を加える。


 ググッ!っとお腹をえぐるような生々しい音を鳴らしながら跳ばされていく



 『オリジナル』を覚醒した時点で殺せなかった理由は、怪物の様な身体能力と驚異な早さのプログラミング能力にあった。

 運動をする時の筋肉の動きを1ミクロン単位で脳内で計算して実行しているから人としての最大の身体能力まで発揮できる。

 プログラミングにも同じように脳で計算し尽くして、導き出した行動を実行しているだけに過ぎない。

 そんな化け物を相手にしている健三。

 殺されかけない任務だとわかっていた。



 「なかなか、強いね。 『光咲』の時とは比べ物にならないね。これは、やり甲斐があるなぁ。それじゃ、これを使おうかな。」

 取り出したのは、【COREs】みたいだが形が違った。 そう、これが【MOTHER】である。


 『懐かしい。こんな道具を使わな、能力を使われへん下等民族が。』

 「そうかな、これも昔に比べれば進化をしてるんだよ。」


 健三が、【MOTHER】を付けたとき、


 ♪♪♪♪♪

 着信音がなった。

 「あ〜あ、残・念!もぅ、帰らないと。これからだったのに。じゃ、また今度。」

 健三は、走り出して屋上から飛び降りた。

 『まて、今死んでもらう。』


 しかし、遅かった。

 健三は、【MOTHER】の能力を使って飛び立っていた。



 取り残された人影は、ただ呆然と立ち尽くしていた。




 「…はい。すみません。…はい、ちゃんと、マークします。はい。では。」

 (光咲君、無事でよかった。私も、もっと自由に動けたら。)

 階段の下、決心する少女が一人いた。




 「兄さん!大丈夫ですか?」

 「光咲!大丈夫か?」

 「光咲先輩、大丈夫っすか?」

 3人が扉を開け光咲の下へ走ってくる。


 『おまえが俺を……。』

 ッバタ!


 『オリジナル』が突然、糸が切れたように前のめりに倒れた。


 「兄さん!?」

 「光咲!?」

 「先輩!?」

 3人は光咲を必死に揺すった。



 「んうぅぅ……」

 目を覚ました『物』声をだした。

 「おう、3人とも。いやぁ、驚いたわ。全部が全部じゃないけど何物かわかったわ。」

 「先輩、何物ってどういう事っすか?」

 「おいおい、晴夜。お前らが、扉越しに聴いてたんは知ってんで。」

 そう、美咲・優子・琴浜・晴夜の4人は、健三の話が『オリジナル』の内容に入るところ。そう、ほほ゛、初めから扉越しに聴いていたのだった。

 「まぁ、自分の口から言うと『オリジナル』っていう物やねんけどな。」

 軽く笑いながら話す、光咲。

 「俺が『オリジナル』やって事すっかり忘れてた。いや、記憶が改善されてとはなぁ〜。………美咲、お前いったい何物や?」

 その場の全員が固まった。そう、『オリジナル』を復活させたのは美咲だった。

 普段、人前で美咲が【COREs】を使っているところを見た事がなかった。それで、みんなは、『美咲は、【COREs】に関して素人だ』と思い込んでいたが、違った。

 美咲は、人の記憶を改善できるほどの腕の持ち主だったのだ。


 「私は、お父さんの子供でも無ければ。お兄ちゃんの妹でもない。」

美咲は、重々しく話し出した。



 私の本当の名前は、繭翼美咲マユツバ ミサキ。私は、お父さん、安藤 尋の記憶を操作してお父さんの子供になった。

 あの、ヤマキ電脳株式会社に殺されたお母さんの復讐をするために。

 何年か、生活をしていく中でお父さんから会社の話を何回も聞いたわ。だから、

「今の私では倒せない」という不安に刈られたの。

 その時にちょうど噂になった『オリジナル』を使おうと思ったの。

 道具だと思っていた私は、目覚めさせて驚いたわ。 そこに居たのは、男の子だったんですもの。

 大企業の最高機密事項の『オリジナル』に踏み込んでしまった私は、引くに引けなくなって『オリジナル』の記憶を改善してそばに置いておく事にしたわ。

 その時の私は、寂しかったんだと思うの。

だから、『オリジナル』を置いておこうとしたの。

 でも、今は違うわ。私に力を貸してほしいの、光咲。


 一通り話し終わると静寂を取り戻した。


 「……わかった。おもろそうやから、美咲の作戦に乗ったるわ。

 …でも、『光咲』は止めて。さっき、『光咲』って呼ばれて、娘が結婚する前日に『お父さん、私…明日結婚するね』って言われた時のお父さんみたいな気持ちになったから。せめて、『お兄ちゃん』か『光君』にして下さい。お願いします。」

 光咲が、娘を持ったお父さんの様に耽った顔で美咲に賛同の意を示した。


 「私も良いかしら?一応、企業に就いているんだけど別にこっちは、強制じゃ無いから力貸せれると思うし。絶対、美咲を裏切らないから!」

 「俺もっす!姉ちゃんと同じくマイナーな企業に就いているから力を十二分発揮できると思います。だから、お願いします。」

 2人は必死に頼んだ。

 2人を見て悩む美咲。

 「2人とも嘘は言ってないで。心拍数とか読んだけど。必死に頼んでるって事だけ解ったわ。」

 「それぐらい、私にも出来ます!わかってるんです、わかってるんですけど。巻き込でしまっていいのかどうか……」


 「光咲君!大丈夫ですか?」

 琴浜が遅れて登場した。 「何やってたのよ!」

 優子が怒りながら聞く。 「健三君の足跡を追ってたんじゃないですか!」

 それに反論する琴浜。

 「それで、解ったの?」

 「完璧ですよ。私、こういうのは得意ですからね。場所はですね、『ヤマキ電脳株式会社』の工場みたいですね。そこで、停まってます。ところで何の話をしていたんです?」

 「『ヤマキ電脳株式会社』!?そんなとことあいつ、繋がってたの?まぁ、いいわ。 話してた内容だけど、美咲の復讐の手伝いよ。」

 少し顔をしかめた琴浜だが、光咲と同じく

 「面白そうですね。私もやらせてください!一緒にブッ叩きましょう!」



 悩んでいる美咲に

 「お願い!」

 「お願いします!」

 「お願いです!」

 3人のモーレツアタックを受け

 「わかりました、お願いします。」

 美咲のOKがでた。

 「「「やったぁ」」」

 3人は喜んだ。


 「今日は、晩いからもう帰るか。」

 切り上げるよう進める光咲を中心にそれぞれ家に帰っていった。




 思いをそれぞれ抱いて。

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