†朝ソシテ夜ヘ 中
暗い校舎の前、昼とは打って変わって異様な空気の流れる場所に影が6つ立ち並んでいる。
色々な思惑が巡っているこの場に、出来れば居たくないと願う者が殆どだろう。
普通の学校には無いはずの雰囲気。
「それでは只今より【COREs】を使用した肝試しに入りたいと思いま〜す。今から行ってもらう部屋までの経路は問いません。詳しいことは開始してから全員にメールで送りま〜す。」
主催者の佐藤健三が説明をする。
「この学校には今日の放課後、僕が直々に幽霊やゾンビやらを学校のシステムにハッキングを掛けて流しておいたから用心して掛からな大変よ〜。HAHAHA!!」
健三は、実のところ【COREs】を使ったプログラミングは凄いものであるである。
日頃は、馬鹿やって笑われているが【COREs】の使い方に関しては世界でトップクラスの10人しか選ばれない【GLANCE】に入れるだけの実力の持ち主ではあるがひた隠しにている(つもりらしいが、学校で殆どはこの事を知っている)。
その【GLANCE】には、琴浜や霧島姉弟やも含まれていて日本には、後1人いる。
日本に5人しか居ない【COREs】の凄腕の内4人もこの学校に通っているのは、学校長の陰謀が有るとか無いとか……。
「では、全員【COREs】起動しておいて! 二人一組は、自由に決めてしまって! 俺は今からセッティングするから今回は、監督役で〜す。」
やけにニヤニヤしながら言い終わり、【COREs】を使起動させた。
「それじゃ、二人一組を作るけど【COREs】の使いに慣れてる奴とそうじゃない奴で分けるか。」
光咲がそう提案して、みんなの反応を伺っている。 「そうですね! それだと…私と優子ちゃん、晴夜君は、1人ずつに別れて、光咲君と美咲ちゃんはその3つの内どこか好きな所を選んでもらってわ?」
ッピク!!
どうも聞き捨てならなかったお二方と発案者が、ひょんな事で闘いの火花を散らしている。
「っまぁ、良い考えね! 私はそれに賛成よ。」
「ッでもそれじゃあ」
「俺も賛成っすよ!」
反論しようとするがすでに間に合わず。
「ヨッシャ! ほんじゃ、俺はどこに入ろかなぁ〜ッと」
事の中心人物は気付いていない御様子。ここにいる3人が好意を抱いている事もしらずに…。
「一緒に行こ! 光咲君!」
先手を打ったのは琴浜だった。
すかさず優子も。
「あたしといた方が心配無いでしょ? 光咲」
ここまで押され気味だった美咲が口を開いた。
「お兄ちゃん、私と一緒に行って!」
涙目になりながら光咲に訴えた。
「ッッ!! わかった! わかったから泣くなや」
アタフタしながら光咲が答えた。そこまで来ると後は、とどめだと言わんばかりに
「ありがとう!! それじゃ、出発しよ!」
涙目から戻った美咲が、光咲の腕を引っ張って校舎へ入って行った。
「悔しいです〜。仕方ありませんね。優子さんと一緒に行動させていただきます。」
たった今ライバルに好きな人を連れていかれた2人は、佇んでいました。
「ソウダナ! 仕方が無い。ッヨシ! 行くか」
今回の事は諦めて気持ちを切り替えた元会長。
2つの影が校舎へ入っていく。
「うわぁ〜、完全に忘れられた人になってるなぁ。俺、帰ろうかな。」
遅れる事少し1つの影が校舎に消えていった。
校舎の中は意外と月明かりで明るかった。しかし、それが不気味に雰囲気を醸し出していて本当は怖がりな光咲や琴浜にとっては最悪であった。
「ほんま、最悪や。」
と感想を述べる光咲。
「怖いです〜、怖すぎます〜。いろんな意味で」
と苛立ち気味の優子を見ながら述べる琴浜。
♪ブルブルブル
光咲と美咲の【COREs】が受信した。
美咲の方の内容はこうだった。
『只今より目的地の発表します。
目指してもらう場所は、2階 職員室です。取って来てもらうものはメールです。【REAL】に出現させておきましたのでGETして内容を保存すればクリアです。保存したら屋上まで来てくださ〜い。質問は、受け付けません…でわ』
光咲の内容は違った。
『只今より目的地の発表します。
目指してもらう場所は、5階 屋上です。取って来てもらうものはメールです。【REAL】に出現させておきましたのでGETして内容を保存すればクリアです。保存したら屋上まで来てくださ〜い。質問は、受け付けません…でわ』
そう、目的地が違ったのだ。
光咲達は、先に美咲の方から行くことにした。目的地は、職員室だ。
「姉ちゃん、待ってくれよ。俺も一緒に連れていってくれよ〜。」
情けなく言ったのは、晴夜だった。
「あんた、目的地は何処だったの? 私達は、理科実験室よ。」 どうやら、二人は同じ目的地のようだ。
「ッエ!? 姉ちゃんらも? 俺も理科実験室」
「それじゃ、一緒に行きましょうか」
暗闇の中天使の如く微笑む琴浜にときめく晴夜。
「ありがとうございます!」
こうして優子御一行は、理科実験室を目指すことになった。
一方、光咲&美咲ペアは
「っわ!? 来んな来んな!」
「兄さん大丈夫ですか?この幽霊と接触すると【COREs】から間接的に脳へのダメージが有るみたいです。」 【COREs】を扱いながら逃げる二人。
畜生!! という罵声を発しても虚しく体力を取られるだけだった。 隣で【COREs】を駆使して必死に対策を練る妹。
片や【COREs】を付けている事すら忘れている兄。
二人は、走りながらしかも職員室を目指していた。
しかし、向かっている途中逃げ場も無く幽霊&ゾンビに挟み打ちを受けてしまい身動きが取れなくなってしまうことに……。
幽霊が、光咲に近づこうとした時である。さっきから【COREs】を使って何かしていた美咲が叫んだ。
「兄さん! 【COREs】にウイルスとゾンビの分解プログラムを送りました! それを使ってください。」
なんと美咲は逃げながら幽霊とゾンビの解析をしていたのだった。
これは、容易な事では無い。
普通に【COREs】を使う分に、【COREs】だけに集中せずに周りの事をしながらでも出来るようにできているが、職員室への的確なルート解析・幽霊とゾンビの解析・そして、逃げる。
美咲はこの3つのことを同時進行させていたのだった。
「おう! サンキュー! ヨッシャアア! 死に曝せ!」
光咲は、瞬時に【REAL】に銃を構築しそして、撃った。
撃たれると幽霊は、実体を失い消えていった。
光咲も光咲で凄腕の持ち主ではあった。前にガンシューティングGameで使ったその銃を瞬時に【REAL】に出せるだけの腕は持っているのだ。
…いや、腕と言うより感覚で操作していると言った方が良いだろう。才能の面でいえば琴浜や優子、晴夜とも引きを取らないだろう。しかし、構築や操作に群が有りすぎるために上にはなれていないのだ。
「いやっほ〜!! 楽勝楽勝」
あっという間に周りを一掃した光咲。
その間に美咲も、銃器を実体化したようだ。
二人は職員室まで、一直線で進んで行った。
「何だこいつらは、私の敵じゃないね! 晴夜、分解プログラム何分頃でできる?」
「姉ちゃん、出来たゼ! 相手に直接流し込む!」
世界中に10人中の一人と呼ばれるだけの事がある。
30秒とかからない内に分解プログラムを組み終えるほどの力はダテでは無い。
「ハイッ! 終わり! さっ、理科実験室に行きましょうか。」
一通り作業をし終えた晴夜が先を歩き出した。
「弟よ!! でかした! 私らを無事に理科実験室まで護衛するように!」
「イエッサー!」
阿保だ、この二人。 とまことしやかに琴浜が思っているとは知るよしも無い。
−理科実験室−
「ふ〜、晴夜あんた何体殺した? 琴浜わ?」
「俺は、35体!」
「私は、67体」
「フッ! あんた達へぼいわね! 私は127体よ! 見よ我が力!」 優子が、潰れた。いや、地は他分こっちだろう。
「イヤイヤイヤ! へぼいとかって言うレベルじゃないから! 姉ちゃん」
「そんな事より、早くメールをGETしちゃいましょぅ。」
琴浜は、理科実験室の中にあるフワフワ浮いているメールを指差す。
「そうね、そうしましょ。私はこっち、も〜らい。い〜い、みんなで一斉に開けるから待ってるのよ」 と言いながら優子は、一番近くのメールへ走って行った。
「それじゃ、私はこっちを。」 と言いながら奥のメールへ走って行った。
「それじゃ、俺は、これで。」
「いくわよ! 1・2・3・ハイッ!」
♪♪♪♪♪♪♪ 着信音が3つ鳴った。
−職員室−
「ヨッシャ! メール発見〜。早く美咲、取ってこいよ!」
「うん、ちょっと待ててね。」
と、美咲はメールの方へ走り出す。
「ヨ〜シ、次は俺か!」
ッバタン!
「おい! 美咲! 美咲大丈夫か?! どうしてん急に! おい! おい!」
美咲が倒れた。どうやら気絶しているらしいが体が痙攣している。
「どうなってんねん! ケンゾー! 返事せえや! 聞いてんのか、ケンゾー!」
光咲が何回も健三に電話を送っても返って来るのは、虚しく響く電子音声だけだった。
「クッソ! 他の奴も返事せ〜へんし! どうなってんねん! 外との連絡は取られへんし、多分この分やと、外にも出られへんやろな。……取りあえずこのGameを終わらせて助けを呼ばなッ!」
急いで屋上まで向かう光咲。右手には一丁の銃をもって走った。
こんな事有り得ない。と言わんばかりに……。
「……はい、任務は遂行中です。……はい、わかりました。……はい、失礼します。」
闇の中で電話を切った。
…ダッダッダッダッ! 階段を昇って近付いてくる。
バタンッ!
出て来た少年は、闇の中の人物を見つけ走り出した。
「ケンゾー! テメェー! Gameでも限度って物が有んだろうがっ!」
怒りをあらわにしながら走ってくる。
「やぁ、コーサク早かったね。」
それを、微笑みで返す今回の事件の首謀者の少年。
「あのメールにどんなウイルス入れててん!」
「あれ〜、一応コーサクでも解析出来るように簡単な物にしておいたけど?」
悪戯に笑う少年。
「阿保か! あんなん琴浜や優子や晴夜なら未だしも俺に解ける訳無いやろ!」
段々、血が頭に昇り出しそしてピークに達した。
「妹をあんな目に合わしておいてその態度か? そうか、お仕置きが必要やな。」
いたって冷静にしかも、殺気立てて言い放った。
−職員室−
「ック! バックアップは取っておいて正解だったけど、少し遅かったみたいね。5分も掛かっちゃった。彼に本当の事を思い出されるのは、まずいわね。」 彼女は、立ち上がり最終目的地である屋上を目指した。
−理科実験室−
「っぅう、何とか抜け出せたわね!」
優子は、周りを見て驚いた。
琴浜と晴夜が痙攣しながら倒れているのである。
「ったく! あんた達、自分で自分のウイルス駆除するのにどれだけ掛かってんのよ。」
実際の所、優子が早過ぎるのである。
普通は、小1時間掛かるところを優子は、3分と掛からない。流石と言うべきか。とにかく、凄すぎるのである。
「仕方ないわね、起こしてあげるわ。そして、佐藤のやつをぶっ叩く!」
彼女は、ニヤニヤ笑いながらさっき自分が使ったウイルス駆除プログラムを流し込んだ。
「んぁ、助かった〜。姉ちゃんが、助けてくれると思ってたよ。」
姉に頼り切っていたような発言をしながら喜ぶ、弟。
「ありがとうございました。後、もう少しだったんですけど。」
さりげなく喧嘩を売る(優子の勘違い)ような態度の、ライバル。
3人とも意識を取り戻し、目指すは屋上だ。
屋上には、闇の中の2つの人影が居る。
そして、屋上前の扉に先客が居た。




