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†朝ソシテ夜ヘ 上


−安藤家にて−

 「コーサクく〜ん、一緒に学校行っきまショ〜!」

 朝から人の家の前で近所迷惑を省みず学生服を着て叫ぶ少年。

 現在6時50分すぎ。

 「ッゴラァ!! ケンゾー!おまえ何回教えたらすむねん」

 ケンゾーと呼ばれる少年 佐藤 健三(15才) 私立仁美大学附属中学校に通ってる少年。成績優秀、運動神経抜群な少年。その半面、女垂らしでイタズラには限度をわきまえないがポリシーの少年でもある。

 今日は、私立仁美大学附属中学校の卒業式。それが楽しみで早く起き過ぎてしまう始末。

 「ッアァ! もう、良いから入って待っとけ!」

 「うぃ〜す、おじゃましまぁぁす。」

 気にすること無く我が道を行く少年は、遠慮無く親友の家に上がり込んだ。

 「いらっしゃい、ケン君」

 「おはよ! 美咲ちゃん! 今日も一段と……ゥヘヘヘヘ」

  ッすぱこ〜ん!!!!

 スリッパを片手に持ち仁王立ちしている少女 安藤 美咲(15才)同じく私立仁美大学附属中学校3年である。

 学校では、その美しさと頭脳明晰さで大和撫子との異名を持つ少女である。

 「馬鹿ですねぇ、私に手を出すなんて10年早いですよ」

 鬼の形相でリビングで立っている。

 「あ〜あ。やられてやんの」

 俺は嘲笑いながら言った。

 「おはよう、兄さん」

 「……おはようzzz」

 「兄さん、大丈夫ですか?昨日遅くまで起きられていたみたいですけど…」

 「コーサク、俺は何してたんかわ敢えて問わんとくわ。ぁ〜あ〜、エッチィ〜のぉ〜。」

 コウサクと呼ばれた少年は 安藤 光咲コウサク安藤家長男で何かをやり始めると止まらないタイプだ。そのため、今日も顔に隈を作りながらでてきた。

 「阿保か!!  お前と一緒にすんな!昨日は、壊れてた【COREs】を直してただけや。ついでにスペックアップもやってただけや。」

 という感じで卒業式であると言うのも関係なしに隈を作って部屋からで出来た。

 「兄さん、急がないと卒業式に間に合わなくなりますよ」

 美咲に急かされつつ靴を履く光咲。




 ♪ブルブルブル

 光咲の【COREs】に受信があった。今朝直し終わったそれを目に掛けた。


 『イヨイヨ発売日決定 最新型【COREs】コンタクトレンズ型 2089年3月25日!』


 ヤマキ電脳株式会社からの定期メールだ。




 総称【COREs】

 ヤマキ電脳株式会社が発売している眼鏡型パソコンの事だ。

 簡単に言えば脳の使われていない所をパソコンとして使い、眼鏡は脳のパソコンを起動させる装置であり、ディスプレイであり、ネットへ繋ぐための通信機器としての役割を果たしてくれる道具である。

 特徴、場所を取らない事や手の微かな動きだけで操作するので誰でも身体の一部の様に自由に動かせる。


 ヤマキ電脳株式会社HPより参照




 「お前ら、一発ビシッと最後決めてこい!!」

 今日巣立っていく生徒達の指揮をとる先生が声を張り叫んでいる。

 「俺からは以上! 卒業式終わった後は教室帰って来られへんから忘れ物するなよ」

 「「「は〜い」」」

 「ッヨシ、じゃあ体育館に出発。」

 声が廊下に反響しつつ影が体育館へ進んでいった。




 無難に開会の言葉、卒業証書授与など滞りなく終わり皆それぞれの思いを残して……。


……以上卒業式を終わります。


 (んぁ、もう終わったんか? ッヤベ! 寝てもてた!! まぁ、ええか。)とまた寝る者。


 (兄さん兄さんわっと……!? ッ寝てるわ……最後くらい、ちゃんと起きててよ!!)呆れ顔の者。

 (ヨッシャ!! 明日から遊び放題になる。ナンパにカラオケ、ゲーセンも行き放題〜〜〜最っ高!)感極まっている者。


 等、想いは様々である。




 卒業式が終わり校庭には、卒業生や在校生などが入り交じっていた。



 「ただいまぁ」

 光咲も一通り友達と喋りながら帰って来た。

 「あぁ、お帰り光咲。お前、卒業式ずっと寝てたナァ。父さん恥ずかしかったぞ。プンプン」

 こんなつまらない2世代前位のギャグでの出迎えをしているのは、光咲の父親 安藤 ジンその人であった。

 こんな阿保な父親は、意外にも大手大企業 ヤマキ電脳株式会社の開発局局長であり取締役でもある超が付くほど忙しい部類の人に属している。

 「親父、今日の仕事は?」

 「あぁ、父さん会社クビになった。」

 (っなんですとぉ〜!!!!!)

 驚き顔の光咲を見ながら父親が言った。笑いながら。


 「っと言うのは嘘で、今日有給休暇使ったから大丈夫っ! どうした? 顔赤いぞ? 俺に惚れたか?」 ワナワナ震え出す光咲。滅多に我慢する事のない光咲が我慢をしている。

 「っふ、俺も大人になったんだ。そんな挑発には乗んないぜ。」

 (絶対殺してやる!!!)

 それでも、我慢を続ける光咲。

 「なぁ〜んだ。つまんないの〜」

 怒りを抑えて光咲は続ける。

 「んで、本当の所は何しに帰ってきたん?」

 「今日の晩から半年くらいまた、研究所篭るつもりだから着替え1式取りに来たついでに卒業式を見に来た。」

 ツッコんでくれと言わんばかりの内容に光咲は、押し問答していた。

 (ツッコミたい、ツッコミたい!!)

 「何で息子の卒業式がついでやねん!!逆やろ逆!!」

 「……っへ? 何か言った?」 そう、見事なまでのスルーだった。

 (この親父絶対殺す。)そう、光咲は誓うのであった。その日を目指して。


 「お父さん、あんまり兄さんをからかわないでよ。」

 美咲が、静止をかける。その、両手にスリッパを携えて…。

 「また、急ですね。でも、いつも通り任せて! この家は私が守るから!!」

 自信満々に答える美咲。


 (まぁ、高校に行くって言っても校舎が代わるだけやしなあ。心配ないか。)

 投げやりげな兄。

 「せうだな、それじゃ任せたよ。行ってきます。」

 「「いってらっしゃい」」

 二人で父の背中を送った。




 晩飯の後、光咲の【COREs】が震え出した。

 「ッオ!珍しく電話テレパシーか、……もしもし、」

 『ケンゾーやけど…』

 電話の相手は、紛れも無くハイテンションな健三からだった。

 『今から中学生最後の思い出作りに行こうぜ!一応委員長と晶には伝えといたけどお前も来るよな? 11時に正門前で【COREs】忘れるなよ』

 これは、絶対OK前提に話しているにちがいない。

 「OK! んじ」ブチッ

 自分勝手に切っていった。

 「兄さん、誰からだったんですか?」

 様子を見ながら聞く美咲。

 「ケンゾーからや。11時に正門集合らしいぞ。美咲は留守ば」

 光咲が留守番するように言おうとした瞬間

 「私も行く!!!」

 「ッあ、そうか。」

 今日はやる気が一味違う美咲であった。


−夜 To night−

 「お〜い、コーサク早くこ〜い」

 夜でもハイテンションな健三である。

 そいつの後ろから3人の人影が出て来た。

 「遅いよ!コウサク君」

 どうも怒っているらしい。

 「いや〜すまんすまん。こいつが遅くて」

 「すみません……」

 この少し目を吊り上げて怒っている彼女は、秋野 琴浜コトハである。かわいいのだが短気で怒りやすさは、この学園で1、2をあらそうほどだ。

 「先輩、良いっすよ別に。気にしてないっすから♪」

 「ったく、高校生になるんだから5分前行動とか出来ないかしら?」

 この二人は、2年の霧島 晴夜セイヤと姉の霧島 優子ユウコだ。二人とも生徒会副会長と会長であり。学校では、ちょっとした最強姉弟として名を上げていた。 「ま! 良いじゃん! 揃ったことやし。」

 ケンゾーは少し待ってから

 「それでは、ただ今より【COREs】を使用した2人1組で『肝試しに行ってもらう』」

 ここで引き換えしておけばあんな事にはならなかっただろうと誰が思ったであろうか…。




−某大企業社長室−

 「おはようございます」

 黒いシックなスーツに身を通した40代位の男性が立っている。

 「約50年ぶりかな? 久しぶりの夜だね。星が綺麗だ。」

 30代前半位の細身の男性が呟いた。

 「そうね、私達がいない間の話しは先に聞いたわ。『オリジナル』ねぇ。私の期待以上の子が出て来てくれていて嬉しいわ。あなたも聞く?」

 細身の男性と同年代であろう女性は、長く綺麗な金のブロンドの髪の持ち主であった。

 「いや、今はいい。食事の時にでも聞いておく。」

 「滝宮様、父からの遺言で会社の社長はあなたに任せるとの事です。如何でしょうか?」

 (どうしてこいつ等に会社を渡すんだ!! こいつ等を裏切るという手も……)

 滝宮と呼ばれた男性は不意に笑いだしこう告げた。

 「判った引き受けよう。ただし、人事は俺の好きにさせてもらう。シェリーにも同等の権利をあげてくれ。」

 彼が部屋を出ようとすると最後にこう告げて行った。

 「お前俺を裏切ろうとするなよ?」

 「……はい、かしこりました。」

 シェリーと呼ばれた女性は、こう告げた。

 「あんまり信の前で『念わない』方がいいわよ〜。 恐いから。あと、『オリジナル』捕まえて来てくんない? 場所は、わかってるよね?ッジャ、宜しく!!」

 彼女は、伝える事は伝えて部屋を後にした。

 残された男性は苦虫を噛んだような顔のまま突っ立っていた。




 そう、既に巻き込まれてしまっていた。彼等によって…。

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