†SUMMERVACATION[TWO]
て事で、リビングで『みんなで海に行こう』作戦会議をしている。
机には、旅行プランの載ったパンフレットからオカルト雑誌までいろいろと置いてある。
5人とめ、それぞれ雑誌をめくりながら話し合っている。
「やっぱり!断然、沖縄やな!!海は、綺麗でピチピチギャルもいっぱい!!ッウワ!!」
光咲は、殴られて部屋の端っこまで転がった。
元の位地を見てみると、そこには3人が立っていた。
「コ・ウ・サ・ク!!居るでしょここに!」
「セクハラですよ!!光咲くん!!」
「大丈夫ですか!?兄さん!!ダメですよ、みんなを怒らせちゃ。」
俺は、知っている。
大丈夫ですか!?と言っている美咲先輩の手にスリッパが握り締められている事を。そして、光咲先輩の顔に何か楕円ぽい痣が出来ていることを・・・。
ご愁傷様です。先輩。
・・・ぅうう復活!!!!
「まぁ、おふざけはそれくらいにしといて。」
痛かったですか?先輩。
痛かった・・・とても。
「私、インドに行ってみたいんだけど。呪いとか調べてみたいし。」
「優子さん、そこ本当に出そうですし・・・ね!やめましょうよ。・・・ね」
「そうやそうや!お前は俺らを殺す気か!?」
顔を強張らせながら反対する2人。
しかし、反論はするがなかなか決まらない行き先に場が静かになる。
美咲が、ツアーのパンフレットをパラパラめくっていると、
「兄さん、行き先が決まらないんでしたら無難に大陸特急の旅とかどうですか?後の夏休みほとんどフルに使っちゃいますけど。」
美咲は、大陸のパンフレットを開きながらみんなに見せた。
「?別に俺は良いねんけど。たしか、それってユーラシア大陸を中国からイギリスまでの旅やんな。」
「そうですね!まだ、そっちの方が断然マシですし。イタリアも停まるみたいですし泳げますよ!」
2人とも本当に嫌だったんですね…。姉ちゃん、怒ってないといいけど…。
と部屋の隅っこで避難している晴夜が思う。
晴夜がフッと見渡す。
相当、嫌だったのか2人とも旅行がツアーになって喜んでいる。その反対側で、後ろを向いてガッツポーズをとる2人。
姉ちゃんが怒ってない!?むしろ、笑ってる?
晴夜は、聞いてしまった。
(流石、美咲ね!!完璧よ)
(当たり前じゃないですか。一つ目の目的地は、囮で二つ目を本命にする。一つ目が行きたく無さすぎて、少しくらい怖くても二つ目でOKが出るって寸法です。)
(旅行が楽しみね。)
(そうですね。)
2人が肩を震わせながら笑っていた。
恐い恐過ぎる。俺、やめとこかな……。
「特急列車での旅行やからなぁ。荷物は、各自適当に。旅行会社には、今から電話することにして。後は、いつから行くかやけど。どうする?」
美咲が旅行の種類を説明する。光咲がさっきのパンフレットを美咲から借りて観ている。
「コースもいろいろと有るみたいですね。片道9泊10日のコースと片道29泊30日のコースと有りますね。往復だと1ヶ月丸々使うコースと2ヶ月丸々使うコースがありますよ。」 「1ヶ月、2ヶ月かかるのは絶対無理だから。片道9泊10日しか無いわね。それで、イギリスからは飛行機で帰るしかないわね」
と話をまとめる優子。
「そうですね。それだと、飛行機のチケットも取らないと……。」
それを聞くと晴夜が立ち上がって部屋の隅からこっちへ歩いて来た。
「それなら、大丈夫ですよ。僕、旅行会社も下請けに在りますからお金の面は融通が利くと思います。だから、気にしないで下さい。」
・・・・・・エッ?
優子以外目を見開いている。唯一、優子だけが。あ〜あ、と言わんばかりの顔で顔を伏せている。
「ちょっと、待ってください。ッエ、晴夜の親父さんが・・・やんな?」
「いいえ。僕、自信がです。」
言った途端優子がダッシュで晴夜に蹴りを入れる。 あんた、誰が言って良いって言った?と影で囁きながら晴夜に聞かす。首を絞めながら。
ガハッ!!
絞められているせいで息が詰まっているみたいだ。
だって、姉ちゃん。山崎さんが、
「今、社長が逃走中だから坊ちゃんが事実上の社長ですね!もう、みなさんに言っちゃっても良いんじゃないですか?」って言われたから・・・つい・・・ごめんなさい。
瞬間、首から手が離れた。
エェェェェェ!!!!
「晴夜君って、ちゅ、中学生ですよね!?」
口をぱくぱくさせながら驚く琴浜。
面白いリアクションご馳走様です。琴浜先輩。
「あぁ、そうやったんや。」
さっきのエェェェェェ!!!というHIGH TENSIONなリアクションが嘘だったように軽く流す光咲。
先輩、もう少しリアクション取ってくれると有り難いんですが・・・。
「知ってましたよ?みなさんの素性は、調べ尽くしてますから。」
と笑みで答える美咲。
うわ〜、この人言っちゃったよ。みなさんの素性は、調べ尽くしてますから。って危な過ぎますよ。
といろいろとツッコミを入れる晴夜。
「っま、お金は晴夜に任せて。私達は、パスポートと荷物を纏めておくこと。で、晴夜が旅行会社に話しを付け終わったら連絡を入れるって事で。」
と、うまい具合に纏め上げる優子。
「そうですね。それでは、作戦会議はお開きって事で。・・・兄さん。まだ、昼前なので2人でデパートに昼食を兼ねて旅行に必要そうな物を買いに行きましょ?」
ピクッ!!
2人の眉毛が吊り上がる。
「光咲君、私も行って良いですか?」
「私も!!早く終わったら必要な物買って帰ろうと思って、お金持って来てるんだ!」
光咲は、何も考えていない顔で
「んあ?良いで、別に。」
と難無く承諾をもらうと3人は、リビングを出た。
せっかく兄さんと2人っきりで遊べると思ってたのに〜!
と顔を膨らます美咲を観ている晴夜。
「姉ちゃん!俺も行くよ!」
「は?あんた何言ってんの?・・・あんたは、さっさと会社行ってその旅行会社とやらに話し付けてきなさい。」
マジですか〜!!
部屋から財布と【COREs】を取って靴を履いて出て来た光咲と美咲。美咲は、【COREs】で家のセキュリティにロックを掛け終った。
「さぁ、行くとするか!こっからは、デパート近いから歩きですぐ着くな。って、晴夜!お前、そっち反対方向やぞ?」
「いやっ!その!そう!会社から呼び出しで、今から行かないと・・・。それじゃ、お先に失礼します!!」
と言って、晴夜はその場から走り出した。
さすがに、姉ちゃんに脅されて旅行会社に行ってきます。 とは、口が裂けても言えないよな。
「なんや。まぁ、しゃ〜ないな。んじゃ、行こか。」
4人は、デパートに向かって歩き出した。
「うわ〜、久しぶりやなぁ、ここに来るの。」
光咲が子供の様に目を輝かしていた。
「あの〜。私、行きたい所があるんですけど・・・光咲君、着いて来てくれますか?」
少し顔を赤らめながら訪ねる琴浜。
「イイゼ!よっしゃ、行こう行こう!」
と言いつつ光咲は、琴浜の手を取り歩き出した。
勿論、光咲を好きな2人からしたらこの光景は許しがたき光景である。
「光咲!!私も!」
と叫びながら、もう片方の腕を取る優子。優子の顔も少し赤らいでいた。
デパート戦で完全に出遅れてしまった美咲は、怒りをどこにも向けることが出来ずメラメラと溜め込んでいた。
「此処です!!」と腕を引っ張りながら着いた場所は、
「水着売り場か〜。そうやなぁ。泳ぐんやったら、俺も用意しとかななぁ〜。」
と言いながら女性ようの際どい水着を見つめている光咲。
「・・・てか、此処って女もんだけ?」
「そうです。私の水着選びを手伝ってほしくて・・・ダメですか?」
そう言いながら琴浜の顔が朱くなっていく。
「いやいや!!そんな事無いって!ヨッシ、行こ行こ!水着見に行こ!」
と言って優子との手を解き水着売り場へ入っていった。
「大分、強敵ね。でも、そっちの方が燃えるわ。」
と恋愛戦争に燃える優子に対して、意気消沈している美咲はさっきから何も話していない。
「これなんて、どうですか?」
と明るめのオレンジ色のトップスに花柄のボトムで上下ともに可愛いフリフリが付いているセパレート型の水着を見せる琴浜。
すかさず、美咲も光咲に見せる。
「兄さん、こういうのはどうですか?」
言いつつ際どいビキニを見せる美咲。
学校以外での美咲の水着姿を見たことが無かった光咲は、妹の成長をこんな形で垣間見ていた。
たじろぐ光咲に反対側から問い掛ける優子は、
「光咲!どれが良いのかな?私、あんまりこういうの解らないから・・・。光咲が選んでよ。」
と少し赤面している様に見える。
「そうだなぁ。優子ならこういうのが似合いそうだな。」
と選んであげる光咲に店員さんが近づいて来た。
「今日は、水着のお買い求めですか?ありがとうございます。お嬢さんにお似合いの水着でしたら、こちらなんかもいかがですか?宜しければ、試着していただいても構いませんが。」
と優子に水着を2着選んでくれる。
「それじゃ、試着してこいよ。自分で気に入ったやつを選んだら良いから。」
と言って試着をさせる光咲。
「あっ!!私もしま〜す。光咲君、ちょっと待ってて下さいね。」
とさっき選んでいた水着よりもいっぱい手に持って試着室に入っていく琴浜。
「兄さん!!私も行ってきます。カバン、観といてください。」
テッテッテッテッ! と効果音が聞こえそうな程嬉しそうに試着室に入っていく。
はぁ〜、みんなどんなん着てんのかなぁ? と考えていた光咲だが、フッと気がついたように急に恥ずかしくなった。
うわ〜、今思ったら此処って女物しかないやん!?しかも、今はみんな試着室に入ってて俺一人やん!?絶対、外から見られたら『この子、女装僻でもあるのかしら』雰囲気を醸し出してるんとちゃうか?変態に見られてる〜。
と真剣に悩んでいる光咲。
レジ前で、悩み込んでいる光咲をよそに、この店のスタッフルームでは、
「あの子、誰の彼氏ですかね?」
「やっぱり、あの水着選んでもらってた子じゃ無いかしら!」
と言っているのは、さっき優子に水着をオススメしていた店員である。
「そうも見えますが。実は、あの控え目な女の子かもしれませんよ〜。」
「そうなると、あの『兄さん』て呼んでた女の子は完全に妹よね。だったら、あの子は白?」
・・・・・・
「いや、黒ね。よくゲームにもあるじゃない。ね!だから、黒よ、黒。」
「はぁ〜。それだと、関係がややこしくなりますね。控え目な彼女は、男の子と付き合っていて。幼なじみの女の子が、男の子を狙っている。彼女は、それを知っているけど気が弱すぎて言い出せない。そんなこんなやってる内に妹まで参戦っとこですか?」
「案外ドロドロね。」
「そうですね。」
と裏で当たらず外れずな答えを弾き出されていることに全く気付かずに3人を待つ光咲。
しばらくすると。琴浜、優子、美咲の3人は、それぞれ試着を終わらして出て来た。
Let's お披露目 time!!