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009

「おい――お前だな」


背後から、低く濁った声が響いた。


彼は足を止める。


街灯の光を遮るように、巨大な影が立ちはだかっていた。

まるで肉の塊のような体。

広い肩、突き出た腹、丸太のような腕。


男は見下ろすように彼を睨み、口元を歪める。


「俺の部下を気絶させたガキってのは……お前か?」


彼は一瞬だけ男を観察した。


――安物の革鎧

――腰には短いハンマー

――手首にはハンターの証


ハンターだ。


「……復讐か?」


彼は淡々と呟いた。


男は大声で笑った。


「察しがいいな。でもよ……さっきの雑魚と同じだと思うなよ?」


一歩踏み出す。

地面がわずかに震えた。


「今ここで土下座すりゃ、半月の入院で済ませてやる」


空気が重くなる。


普通なら、足が震えて当然の場面だ。

だが――彼は違った。


静かに、短剣を抜く。


何も言わない。


「……は?」


男が眉をひそめた、その瞬間――


ヒュッ。


男の視界から、彼の姿が消えた。


「――っ!?」


振り向く暇すらない。


ドンッ!!


刺突ではない。

派手な技でもない。


ただの――拳。


全体重と筋力を一点に集中させた、無駄のない一撃。


巨体の男は横殴りに吹き飛び、コンクリートの壁に叩きつけられた。


バキッ――!!


壁に亀裂が走る。


男はずるりと崩れ落ち、白目を剥いて動かなくなった。


沈黙。


彼はその場に立ったまま、呼吸一つ乱れていない。


「……遅い」


自分の拳を見下ろす。


痛みはない。

痺れもない。


ただ――まだ余力があるという感覚だけが残っていた。


システムウィンドウが浮かび上がる。


【警告】

【測定不能な戦闘力が確認されました】

【解析……失敗】


彼は小さく笑った。


「やっぱり、数値はゼロのままか」


短剣を鞘に戻し、背を向けて歩き出す。


倒れた男の横を通り過ぎる際、低い声で言い捨てた。


「次は……ない」


夜風が吹き抜ける。


身長180センチの影が、地面に長く伸びていた。


ハンターランク1。

戦闘力:0。


だが、この日を境に――

その数字を笑う者はいなくなる。

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