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005

洞窟の中には、まだ粉塵が漂っていた。


砕け散ったゴーレムの残骸が、地面に転がっている。


――だが、

まだ終わっていなかった。


洞窟の奥で、

巨大なゴーレムがゆっくりと立ち上がる。


これまでのゴーレムとは比べ物にならないほどの巨体。

一歩踏み出すたびに、地面が震えた。


「……ボス、か」


アラタは喉を鳴らした。


見ただけで分かる。

あれは、自分が手を出していい相手じゃない。


彼は男の方をちらりと見る。


男は短剣を強く握り、鋭い眼差しでゴーレムを睨んでいた。

完全に戦闘態勢だ。


一方、アラタは――


「……俺、足手まといだよな」


迷いはなかった。


彼は踵を返して逃げ出した。


「ごめん!!」


洞窟の出口に向かって全力疾走する。


その瞬間――


《クエストが発生しました》


無機質な声が頭の中に響く。


「……え?」


アラタは思わず立ち止まった。


《デイリークエスト》

・洞窟内で1つの身体訓練を完了せよ

・条件:ボスが生存していること


《報酬》

・身長+2cm


「……は?」


アラタは目を見開いた。


「今!? この状況で!?」


振り返ると、

ボスゴーレムが咆哮し、男に向かって巨大な拳を振り下ろしている。


轟音。

岩石が弾け飛ぶ。


「まさか……」


新たな表示が現れた。


《推奨クエスト》

・スクワット100回


アラタは二秒ほど沈黙した。


そして――


「……知らん」


洞窟の壁際に移動する。


「戦闘が天変地異レベルでも、

俺はスクワットする!!」


彼は腰を落とした。


一回。


二回。


十回。


「はっ……はっ……!」


背後では、激しい衝突音が鳴り響く。


ボスの咆哮。

短剣が岩を裂く音。


――ドォン!!


洞窟が揺れる。


「来るな……来るなよ……」


四十回。


五十回。


その時――


ズシン、と影が落ちた。


「……え?」


ボスがこちらを向いていた。


ゴーレムがアラタに向かって突進してくる。


「うわあああ!!」


アラタは悲鳴を上げて逃げ出す。


転びそうになった、その瞬間――


ザシュッ!


横合いからの一閃。


ゴーレムが唸り声を上げ、注意を引き戻される。


「余所見してる暇はないぞ」


男の声。


彼は正面からボスと対峙し、

アラタに追撃させなかった。


アラタは地面に転がり、荒く息をつく。


「……まだ……足りない……」


表示を見る。


スクワット:73 / 100


「……くそ」


彼は再び立ち上がった。


ボスが暴れ、男と激突する中――

アラタはスクワットを続ける。


七十五。


八十。


九十。


太ももが震える。

肺が焼けるように痛む。


「……九十九……!」


遠くで――


ボスが崩れ落ちた。


短剣が、核となる岩を貫く。


その瞬間――


「――百!!」


最後の一回をやり切る。


《クエスト完了》


《身長+2cm》


《デイリークエストを達成しました》


アラタは仰向けに倒れた。


息が荒い。


「……俺、

ボス戦中にスクワットしてたのか……?」


洞窟は静まり返る。


男がこちらを振り返る。


数秒の沈黙。


「……お前、何者だ?」


アラタは苦笑した。


「……俺も、それを知りたい」


だが胸の奥で――


初めて、自分が無力じゃないと感じていた。

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