003
翌朝、彼は目を覚ました。
視界に映ったのは、いつものシステムウィンドウ。
だが今回は、祝福の通知ではなかった。
強制デイリーミッション:5件。
その文字を見た瞬間、彼の体は硬直した。
「……強制、だと?」
胸の奥に重たい感情が広がる。
彼は百以上あるミッション一覧を流し見し、その中の一つで視線が止まった。
【ミッション:1か月以内に体重を15kg減らせ】
彼は言葉を失った。
そして、乾いた笑いを漏らす。
「……マジかよ」
皮肉なことに、今の彼は肥満体型だった。
重たい体、丸い顔。鏡を見るたびに気分が沈む。
もし痩せることができれば、外見も、人生も変わるかもしれない。
彼は深く息を吸った。
逃げ道はない。
やるしかなかった。
そのすぐ下に、別のミッションが表示されていた。
【ハンターのパーティーに参加し、ゴーレムを3体討伐せよ】
「……行くしかないな」
そう呟き、彼は立ち上がった。
しかし、外出の準備をしながら鏡を見ると、足が止まる。
自分の体型への劣等感。
他人の視線が、頭をよぎった。
「……でも」
彼は拳を握りしめた。
今動かなければ、何も変わらない。
彼はハンター募集の掲示板が集まる場所へ向かった。
古びた壁一面に、無数の依頼書が貼られている。
条件は厳しいものばかりだった。
経験者限定、即戦力歓迎、固定パーティーのみ。
いくつか連絡してみて、ようやく一人から返事が来た。
「人数合わせでいい。
戦闘は俺がやる。
終わったら報酬は払う」
彼は思わず目を輝かせた。
「……何もしなくて金がもらえる?」
断る理由はなかった。
集合場所には、すでにもう一人いた。
彼もまた、やる気があるようには見えず、ただ人数合わせのために座っているだけだった。
三人。
即席のパーティーが完成する。
任務内容は単純だった。
放棄された洞窟の清掃と、“召喚石”の回収。
召喚石とは、時間とともに特殊な場所に蓄積され、
一定量を超えると、どこか別の場所からランダムなモンスターを召喚してしまう危険な物質だ。
放置すれば、洞窟は怪物の巣になる。
彼は、ごくりと唾を飲み込んだ。
これが――
彼の最初の任務。
そして、
自分を変えるための、最初の一歩だった。




