木枯らしで甘くな~れ!
カコちゃんの名前は、カヨコおばあちゃんから、ちょっともらってつけられた。
だからカコちゃんは、おばあちゃんが大好きだ。
おばあちゃんは、何でも知っている。
ちゃんと最後まで話を聞いてくれる。
お父さんとお母さんは、カコちゃんが話している途中で、
「あとで聞くよ」って言うことがある。
でも、その「あと」は、だいたい来ない。
おばあちゃんは違う。
「それから?」って、ちゃんと続きを待ってくれる。
それに、おばあちゃんは世界一おいしい干し柿を作る。
カコちゃんが一番好きなおやつだ。
「今年は一緒に作ろうか」
そう言ってくれた日から、カコちゃんはずっと楽しみにしていた。
今年最初の木枯らしが吹いた日。
空気がきりっと冷たくて、鼻の奥がつんとした朝。
「今日だよ。干し柿、作ろう」
おばあちゃんにそう言われて、カコちゃんは長靴をはいた。
干す前の柿は、つやつやで、きらきらしていた。
まるでオレンジ色の宝石みたい。
「おいしそう!」
そう言うと、おばあちゃんは、にやりと笑った。
「じゃあ、かじってごらん」
カコちゃんは言われた通り、ぱくっとかじった。
「うえっ!」
口の中が、いがいがする。
舌がびりびりして、変な顔になる。
「あはははは!」
おばあちゃんは大笑いした。
そこからは、カコちゃんの質問が止まらない。
「どうしてこんなに、いがいがするの?」
「どうして、これが甘くなるの?」
「どうして木枯らしを待ってたの?」
「どうして干し柿は、白くなるの?」
おばあちゃんは、一つずつ、ちゃんと答えてくれる。
渋のこと。
寒さのこと。
風と時間のこと。
話している間に、おばあちゃんの手は休まない。
するすると紐を結んで、柿をつるしていく。
「おばあちゃん、手がいっぱいあるみたい」
「そうかい?」
おばあちゃんは、またにやりと笑った。
木枯らしは寒いから、カコちゃんはあまり好きじゃない。
でも、干し柿が甘くなるなら、仕方ない。
ゆるす。
むしろ、ちょっと好きになった。
雪が積もった朝。
庭はまぶしくて、目を細めたくなる。
こたつに入って、干し柿をかじりながら庭を眺める時間が、カコちゃんは大好きだ。
きっと、トモくんとマホちゃんも遊びにくる。
一緒に干し柿を食べたら、かまくらを作ろう。
中に、おばあちゃんにもらった玄関マットを敷いて、
小さな机を運んで、
また、干し柿を食べるんだ。
木枯らしで、甘くな~れ!
おばあちゃん、大好き。最高!




