第三話 魔法って何?
急にはっと目を覚ました。窓の外を見ると夕焼け、あれ?もしかしてめちゃくちゃ眠っちゃってた?時間を無駄にしてしまった罪悪感を抱えつつ、とりあえず階段を降りてみんなのところへと向かった。
四人は地図を見ながら何やら話し込んでいる。
「俺の聞いた話によると、この洞窟に魔族が住んでいるらしいぜ」
フラムが魔族について話している。討伐?そんな気軽に行けるものなのかな。
「討伐に行く?だったらちょうどいいわ。私最近、魔力量を増やしたいと思ってたのよね。」
「この場所は村にも近い、野放しにしておくと危ないかもな。明日にでも討伐に行くか」
エレアもアッサーも私には何やらよく分からない話をしていて、こちらには見向きもせず真剣に話し合っている。忙しそうだし部屋に戻ろっかなと思ったその時、グラスと目が合った。
「あっアネモーナさん起きたんですね。」
「お、おはようございますなのかな、、わっ私どんくらい寝てた?」
急に声をかけられたことに驚いて思わずしどろもどろになってしまった。
「だぁーいぶ寝てたわね。でもこれで疲れが取れたんなら良かったじゃない」
「そうかな?まあ、そう思うことにしよう。ところで何の話してたの?」
「魔族の討伐の話だ。お前には関係ない。」
アッサーは相変わらず冷たい態度。けど、ちょびっと勇気を出して魔法について聞いてみることにした。
「ふーん、あのね。前から気になってたんだけど魔法組織の人でもないのに、何で魔族を討伐してるの?あと、みんな使ってる魔法が違うけどそれはどういうふうに決まってるの?」
アッサーは答えてくれなかったが、代わりにフラムが答えてくれた。
「おうおう。魔法についてはお嬢ちゃんは分からないことだらけだよな。教えてやるよ。俺らが魔族を討伐しているのはありがちな理由なんだが、魔王を倒してみんなが平和に暮らせるようにするためだ。そう言われてもな、お嬢ちゃんは何で俺らが国の魔法組織に入らずに魔族を討伐してるのか疑問に感じるだろう?それについて説明してやるよ。端的に言うとだな国の魔法組織に入るよりもすぐに強くなれるし、魔族を自由に討伐できるからなんだ。魔族を自由に討伐できるっていうのはそのままの意味で分かると思うんだけどよ。すぐに強くなれるっていうことはよく分からないだろう?じゃあここの説明を、グラス頼む」
「え?僕ですか。まあ、いいですけど。この説明をするにはまず僕たちがどうやって魔法を使ってるかから話した方がいいですね。僕たち人間は生まれつきある程度の魔力は有しています。でも、これだけだと個人差はありますが、多くの人は戦闘に魔法を使うには到底足りない魔力量しかないです。ここで使うのが魔石です。魔石は地下にある貴重な石です。石によって持つ、魔法の属性や魔力量が違います。僕たち人間はこの魔石を吸収して、魔法を覚えたり、魔力量を増やしたりしてるんです。レアな魔石だと、すごい魔力量な強い魔法を手に入れられるんですよ。補足すると、魔族はこの魔石が魔王の魔力に触発され突然変異することで生まれます。そして、魔族の強さは元の魔石の強さに比例します。だから、魔石は人間の味方でありつつも、最大の敵でもあるんです。前置きが長くなってしまいましたけど、本題に戻りますね。何で、国の魔法組織にいるよりも、民間で討伐隊をしている方がすぐ強くなれるかって言いますと、もちろんたくさん戦闘経験が積めるっていうのはあるんですけどやっぱり1番は魔石をたくさん吸収できるところですかね。魔石は、地下に行って採掘するか、魔族を倒すことからしか入手できないんですね。だから、多くの人が所属する魔法組織では、十分な量の魔石は一人一人に与えられないんです。対して僕たちは、人数が少なくないので、戦闘においてリスクはありますが、その分効率的に強くなれてるんですよ。」
うーん。知らない言葉ばかりで、難しい。
「説明が多くて頭に入りきらなかったけど、何となくのは分かった。ただ、疑問なんだけど魔石を使って魔法を入手できるなら、いろんな属性の魔法を入手した方が良いと思うけど、何でみんなはそうしないの?」
「それは実に論理的な発想ね、でも実はそうじゃないのよ。なんとね、一人一人に向いてる属性の魔法があるの。だから、違う属性の魔法も集めようと思えばできるわ。でも効率が悪いし、やる意味があまりないのよね。それよりは、一つの属性の魔法に絞った方が強くなれるの」
「ついでの話なんだけどな。魔力も増やせば増やすほどいいっていうもんじゃあない。魔力は自分の魔法のレベルに合ってないともてあましちまうし、むしろ体の動きを鈍くする。魔法っていうのは結構複雑なんだよな」
魔法って難しいな、だけどめちゃくちゃ面白そう。私も使ってみたい。
「私にも、魔法を教えてください」
「...は?危ないだろう。魔法は、生半可な覚悟で使うものじゃないんだ。魔力を増やすっていうことは、それだけ目立つようになるし、魔族からも狙われやすくなるんだぞ。世界を平和にしたいとか目標があるならまだしも、ただ魔法が面白そうとかいう理由で魔法を使おうとするやつには魔法は教えられない」
...怒られちゃった。確かに、自分は「人々が安心して生きれるようにしたい」みたいな目標はないけどさ。でも、魔法を使ってみたいんだよな。かっこいいから。うーん。なんて言ったら魔法を教えてもらえるかな?悩みに悩んでいた時、突然、堪えていた笑いを漏らすようにグラス、エレア、フラムが笑い出した。
「んははっアッサーさんがそれを言うんですか?」
「あんたが1番、小さい頃からしょうもない理由で魔法を勉強してたでしょう。」
どういうこと?と思っていたらフラムさんが説明してくれた。
「お嬢ちゃん。コイツはな、魔族討伐ごっこする時のリアリティを上げたいとか言って、街の教会で魔法を教わり出したんだぜ」
「...それは違う」
「どこが違うんだよ。言ってみろって」
アッサーさんがフラムさんから猛烈に煽られてる。というか、アッサーさんもしょうもない理由で魔法を使い始めたんじゃないか。じゃあ私だって、教えてもらったっていいよね。
「ねえ、アッサーさんも目標がしょうもなかったわでしょう?それなら私も魔法を習っていいかな」
「それでいうと、僕は魔法を教えることには賛成ですよ。僕たちと一緒に生活する以上、魔族との関係は切っても切り離せないわけですし、魔力が多いと狙われやすいとは言っても、魔法が使えれば自衛できますしね。」
「私も、賛成だわ。アネモーナちゃんが、こんなにお願いしてきてるんだし、魔法を教えてあげないなんていう意地悪できないわ。」
「俺は、どっちでもいいと思うけど。アッサーはやっぱり反対か?」
「俺は反対だ。わざわざ、危険な世界に足を踏み入れることはおすすめできない。」
「でも、アッサーさんも、大した目的なく魔法を学び始めたんでしょ」
「それは、失敗だったと思っているから反対している。今は、人々のために生きるという覚悟ができたからいいが、少し前までは、楽しいそうだと思っていた魔法が厄介ごとしか招かず本当に嫌いだった。だから、過去に戻れるなら、魔法は絶対に学ばないし、お前にもやらせない。」
アッサーさんの真剣な眼差しから、私のためを思っていってくれているということは十分に伝わってきた。でも、申し訳ないけれど私は、頑固で馬鹿な人間だからやりたいことをやらせてもらうよ。ちゃんとした目的があればいいんでしょう。
「分かった。」
「アネモーナさん、魔法は諦めるんですか?アッサーさんの言うことに絶対従わなきゃいけないことはないんですよ。」
「いや?諦めないです。私は、村をめちゃくちゃにした魔族を倒したい。だから、そのために魔法を教わりたい。この目的ならいいよね」
「...それなら納得いく答えだが、逆に何でそれが最初に出てこないんだ?村が壊されたのだからすごい恨みがあるだろう。それにお前、いいことではあるが元気すぎやしないか?昨日家族と離れ離れになったやつの言動とは思えないぞ」
そう言われて初めて、自分のおかしさに気づいた。確かに、昨日はだいぶショックを受けてたし、辛かったのに何で今こんな元気なんだろう。ちょっと考えて一つの答えに辿り着いた。
「それは、多分魔族による村への襲撃っていうのが今回が初めてじゃなかったからかな。私の村は今は小規模で、数世帯の家族しかいなかったんだけど、前はもっと多くの人が住んでて、賑わってたんだ。今の状態になったのはここ10年でなんども魔族によって村が壊滅状態に追い込まれたからなの。幸い魔族による犠牲者は今までで一人しかでてないんだけど、みんな村にいるのが怖くなってどんどん村を出ていったってわけ。こんな感じで、魔族によって村が壊されていくのに慣れてたから立ち直るのが早いのかも。最近は襲撃されても、ショックすら感じなくなってたしね。流石に、お母さんと離れ離れになっちゃったのはこたえたけど。」
「アネモーナさん、そんな辛い目に遭っていたんですね。せめてご両親の行方が分かればいいのですが」
「無事だったらとっくに見つかってると思うよ。今までも別々の方向に逃げるみたいなことはあったけれどその時は魔族がいなくなったらすぐに助けに来てくれたし、私の村にここの住所も記録してきてくれたんでしょ?それならもうとっくに来てくれてるよ。後、言ってなかったけれどお父さんは魔族の村への襲撃の唯一の犠牲者だから元々いないんだ。私がまだ小さかったころにあった魔族の襲撃の後、行方が分からなくなったんだってさ。これに関しては、記憶ないくらい小さい頃だから心配しないで」
みんなの間にピリッとした空気が流れる。もしかして引かれてしまったのだろうか。過去のことを話すのは早すぎたかな。と思っていたときフラムが口を開いた。
「...ともかくよ、お嬢ちゃんは俺たちの仲間だからな。心配すんなよ。なあアッサー、魔法を教えてあげてもいいんじゃないか?お嬢ちゃんも俺たちの中で自分だけ魔法が使えないっていう状況は辛いんじゃないか?」
「確かに俺が間違っていたかもな。魔法は教えることにしよう。だけど、魔法を教えるのは、仲間はずれにしないためででも敵討ちのためでもない。魔法を楽しんでもらうためだ。」
えっ、魔法を教えてくれるの!嬉しい気持ちと、どんな心境の変化なのか戸惑う気持ちが入り混じる。
「無理して魔法を使う目的を絞り出させるのは間違っていたな。君は今までいろんなことを我慢してきただろうな。だから、やりたいことをやりたいようにやって欲しい。自分に正直に生きて欲しい。それに意味なく始めることが意味を持つことは案外多いのかもしれないからな」
そういうアッサーさんの目は前よりも少し優しくなったような気がする。私の身の上に同情している?いや私のことを前よりも仲間だと思ってくれてるのだろう。
「みんな本当にありがとう!」
こうして、私の魔法使いライフが始まるのだった。




