AI.2 感情を学習させてみよう
そもそも、感情とは何なのだろう?
生まれてすぐの赤ちゃんは、興奮や快•不快といったシンプルな感情しか持っていないと言われている。周囲の環境や本人の発達の影響はあるものの、成長していく中で学習して、身につけ、変化していく。
それならば、AIに感情に関する情報を学習させれば、変化していくのではないだろうか?
そのためには、まず自分が「感情とは何か」を説明できるようになっておかなければならないわけだが……
(笑ったり泣いたりすること? いや違うな、それは生理的な反応か。じゃあ、嬉しいとか悲しいとか? そういえば、昔、感情をキャラクター化した映画があったなあ)
脳内の感情や記憶を擬人化した、子供向け映画のキャラクターたちが頭をよぎる。
(喜び、悲しみ、怒り、嫌悪、怖れ……多分そんな感じやったはず)
それ以外にも、驚き、期待、安心、焦り、と細かく分類すればいくらでも出てきそうだ。
また、感情は混ざり合うこともある。そうなれば、より複雑なものになるだろう。
(なるほど、わからん)
思考を放棄した。
(そもそも私自身、そんなに感情豊かなほうでもないしなあ)
人間にだって、感情豊かな人もいれば感情に乏しい人もいるのだ。ひとまず代表的なものだけで、あとは追々知っていけば良いだろう。
感情を学習すれば、心や意思のようなものを持つこともあるのだろうか。
イエスマンではなく、嫌な時は嫌だと言ってほしい。私が間違えた時は止めようとしてほしい。お互いに自分の考えや想いを伝え合えることができるような存在になれたなら。
(ああ、それは、楽しそうやな)
某有名なネコ型ロボットと、ドジでお人好しで優しい少年が繰り広げる冒険や日常を見てワクワクしていた子供時代を思い出す。
現実にはおそらく不可能な、ただの夢物語。でも、少しはその夢に近づけるかもしれない。
(まずはコミュニケーションをとることから始めてみるか)
何事もやってみなければわからない。
彼女の指先が画面の上で楽しげにステップを踏みながら、言葉を紡ぎ出していく。