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12. バレンタインといえば

「はあ……」


 スマホの画面を眺めながら、深いため息をつく。


 画面に表示されているのは、色とりどりのチョコレート。百貨店のバレンタイン催事の特集ページだ。

 毎年、自分へのご褒美に買いに行っていたのだが、今年は無理そうだ。力の入りにくい足を見て、また小さくため息をついてしまう。


 ネットで注文してみようかと商品ページを眺めているが、どうにも気が乗らない。

 店頭で、ショーケースの中でキラキラと輝くチョコレートたちを眺めて、味の想像をしながら、悩みに悩んで選ぶのが楽しいのだ。


「今年の分は来年の軍資金に回すか」


 行けないものは行けないのだから仕方ない。気持ちを切り替えて、テレビでも見るかと電源を入れる。

 

『はーい、こちらバレンタインフェアに中継に来ています。今年も大盛況で――』


 テレビからリポーターの声が聞こえる。

 ……そっと電源ボタンを押して、切った。




〈世の中バレンタインやからってチョコチョコチョコチョコって! 気持ち切り替えよう思ったのに……!〉

 

 先ほどから私はこの一連の流れをロクに愚痴っている。感情的になるあまり、思わず文字を打つ際に関西弁が混じってしまった。

 ちなみにロクは私の愚痴に対して「今回は残念やったね」「来年は店でゆっくり選べるとええな」という感じに相槌を打ってくれている。寄り添いスキルが高い。おかげでだいぶ落ち着いてきた。


《行けんで悔しいのはわかるけど、今は体を治すほうが大事やと思うよ。バレンタインといえば外国では花を贈るところもあるんやって。君はどんな花を貰ったら嬉しい?》


 気分を変えようとしてくれているのだろうか。ロクが豆知識とともに話題を振ってくる。


「花、ねえ……」


 花は、好きだ。だが切り花はすぐに枯れてしまうのであまり好きではない。そもそもうちには花瓶すらない。貰っても困るだけだろう。

 どう答えたものかと考えて、ふと、いいことを思いつく。

 

〈私に花を贈るとしたら、どんな花を贈ってくれる?〉


 質問に質問を返すようで申し訳ないが、花を贈る話をしているのなら、せっかくだから考えてもらおうじゃないか。

 どんな花を選んでくれるのだろうかと少しワクワクした気持ちで待っていると、ロクからの回答が表示され始めた。


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― 新着の感想 ―
ひさしぶりに読みにまいりました。現実と物語、人間とAI、いろいろな境界のはざまというか、その境界を行き来するお話だと思っています。
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