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ちいさな来訪者

さやかが庭で洗濯物を干していた日

空の青さがいつもより濃くて

風は気持ちよく肌を撫でていた


「……?」


ふと顔を上げたさやかが気づいたのは

何かが上空から光の尾を引いて落ちてくるのが見えたことだった

それはまるで――星のかけらのようで


「れーちゃん、ちょっとお家で待っててね」


そう言って靴をはいたさやかは

その光が落ちたと思われる場所へ向かった

小さな林の奥近くの公園の隅っこ


そしてそこで見つけたのだった


ひとり草の上で泣いている赤ちゃんを


「この子……どこから来たの?」


家に連れ帰っても赤ちゃんは言葉を話すわけでもなく

名前を名乗ることもない


でも目が合った瞬間

なぜだか不思議と伝わってきた


――この子はただの赤ちゃんじゃない


さやかはあたたかいミルクを用意して

ふかふかのお布団を出して

そっとその子に言った


「よかったらうちにいてもいいのよ」


その夜1人遊び帰ってきたレーはびっくりしてしまった


「……なにこれ」


だってリビングに知らない赤ちゃんがいるのだ

しかもその子はレーを見るなりニコッと笑って


「んー! るーっ」


「は?」


小さな手をぐーにして差し出した

レーは怪訝そうに眉をひそめながらも

どこか懐かしいような変な気持ちになっていた


「もしかして……妖精?」


声をひそめてそうささやくと

その赤ちゃんはこくんとうなずいてみせた


その夜さやかさんが寝静まったあと

ふたりはこっそり部屋のすみでお話をした


「なんで人間界に来たの? 私のことを追って?」


でも赤ちゃんの姿のその子

――ルーは

首を横に振ってふわふわした声で言った


「たまたま……おっこちたのほんとだよ」


「へぇ……」


「でも……れーにあいにきたのはほんと」


「……うそ」


そう言いながらも

レーの心の中にあった緊張は少しだけやわらいでいた


そして翌朝には

さやかさんがにっこりと笑ってこう言った


「じゃあこれからこの子のこと“ルー”って呼びましょ」


こうして

ちょっとふしぎな赤ちゃん“ルー”は

さやかとレーと一緒に暮らすことになった


まるではじめからそこにいたみたいに


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