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うさぴょん号発進せよ  作者: 鈴代まお
第4章 対峙
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第67話 変貌

 炎に包まれたタスクの腕、足、首が耳障りな音を立てながら、有らぬ方向へ捻れるように折れ曲がっていく。

 胸の傷から血が噴き出し、内蔵が飛び散る。悲鳴さえも上げる間がなかった。


 見ていたトヲルはまた戻しそうになり、大量の生唾を飲み込みながら口を押さえる。

 それは見えない何者かの掌により、柔らかい空のプラスチック容器が、徐々に握りつぶされていくような感じにも似ていた。


 人間というものは斯くも簡単に壊れるものなのか、とトヲルは呆然と目の前の光景を眺めながら思う。

 抜け殻になってしまった肉塊が崩れ落ちるのと同時に、側にいたミレイユも倒れるのが見えた。


「おトモダチってね、いっぱいいたほうが楽しいでしょ」

 アイは相変わらず、にこにこと笑いながら入口付近にいた。その周りを死者達が取り囲んで立っている。


「みんなもおトモダチ、いっぱい欲しいんだって」

 掌に小さな黒い炎を宿らせながら、アイは続けて言った。

「でもその前にみんなが、新しいおトモダチとまた遊びたいんだって。アイも遊びたいの。だからおトモダチになる前に、遊びましょ♪」


 アイの炎が突然消える。

 と、タスクの身体がピクリと揺れた。


 既に事切れているのは確かだった。しかしその身体が何かに操られるかのように、ゆっくりと起き上がってくる。

「ほら、また新しいおトモダチが増えた。アイ、嬉しい!」


 その言葉通り、アイは本当に嬉しそうな顔をしてはしゃいでいた。

「ねえ、あなた達もアイのおトモダチになろうよ。そうすれば楽しいでしょ」

 再びアイの掌に黒炎が現れた。


 コウヅキは直ぐさま、倒れているミレイユの前に立ちはだかると、腰に下げていた銃を取り出して身構えた。銃口はピタリと、アイに照準を合わせている。

「っ!?」


 突然横から、首の捻れたタスクが腕に噛みついてきた。

 その反動でコウヅキは、思わず引き金を引く。

 玉は照準から逸れ、アイの脇にいる死体を貫通した。が、元々『死体』だからなのだろう、全く倒れる気配がない。


「く…っ、オヤジ…」

 獣のように変わり果てたその姿に、コウヅキは噛みつかれた右腕を押さえながら呻いた。押さえている左手の隙間から、血が滴り落ちていた。


「今のなぁに? オモチャ?」

 アイが目を輝かせて身を乗り出してきた。同時に携えている黒炎が一回り大きくなり、勢いも増してくる。

 そしてそれを合図に、周囲を取り囲んでいたモノ達が一斉に向かってきた。


「アイもそれ欲しい。ちょうだい!」


 しかしコウヅキの手に、銃はなかった。タスクを無理矢理引き剥がしたときに、思わず手を放してしまったのだ。

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