第42話 回顧2
再び画面は変わる。
「居場所の見当はついた。しかし……」
男は言おうか言うまいか悩んだ。
もしかするとそこには、自分の職場が関係しているのかもしれない。これは調べている過程で分かったことである。
しかし確証はない。
「本当に? そこに兄さんが……」
アキナはテーブル越しに身を乗り出してきた。
「いや、それはまだ分からない」
しかし男は、あっさりと否定する。そして難しい顔をしながら腕を組んで、座っている椅子に深く寄り掛かった。
「どういうことです?」
アキナの代わりにハルヒトが訊いてくる。
確証はない。
だから。
「俺は、そこへ行ってみようと思う」
確かめようと思った。
その場所で自分が調べたことが、実際に行われていると考えたくはない。
だがアキナ達の元へ大金が送られてきたのも事実である。『これを借金の返済に充ててくれ』という、兄からのメッセージと共に。
そして失踪。
男の調査結果と照合してみると、そこにアキナの兄がいる可能性は十分にあったのだが。
それよりも気になることがあった。
本当にそこに自分の職場が関係しているのだろうか。
もしも。
だとしたら。
男の脳裏に、娘と息子の顔が同時に浮かんできた。
「それは一体……? もしかして義兄がそこにいるかどうか、あなたが確かめに行ってくれる、ということなのでしょうか?」
「それも、ある」
「今、兄は一体どういう状態なんですか? それも調べて下さったのでしょう?」
「それは……」
男は口籠もった。
本当のことは言えない。まだその確証さえも掴んではいないのだ。
「今はまだ、はっきりと断言できない。本当にそこにいるのか……それもまだ定かではない。だからそれを俺が実際に行って確かめてくる」
「なら」
アキナはそう言うと振り返り、ハルヒトを見た。瞬間、男には二人の視線が絡み合ったように見えた。
それも束の間。直ぐにアキナは男に視線を戻す。
「私達も一緒に連れて行って下さい」
力強い光を湛えた瞳。そこには決意の色が感じられた。
男は直ぐに返事を返すことはできなかったが、ようやく口を開いた。
「それはできない」
「何故です?」
「その場所がワープ圏外だからだ。二人にはここで待機していてほしい」
「もし私達がここで待っていたら、兄にはまた会えますか?」
「それは……」男はまた黙り込んだ。
男には確信のない約束を安易にすることなどできなかった。
「本当のことを仰ってください。兄は……兄は何かのトラブルに、巻き込まれているのではないんですか?」
アキナは男の顔をじっと見詰めながら、問いかけた。




