第41話 回顧1
第3章 発見
突如出現した、白い光に飲み込まれたうさぴょん号。
船がそこで見つけたのは、思いも寄らないものだった。
そこにあったのは、幼児の笑顔である。
(――何だ?)
瞬間画面は切り替わり、今度は何かを諦めたような、その歳の割には冷めた眼を持つ少年の顔が浮かんできた。
(コレは……?)
疑問に思っている間にも、画面は目まぐるしく移り変わっていった。
時には子供と遊んでいる場面だったり。
見知った顔が浮かんでは消え。
かと思えば、戦っていたり。
順番は滅茶苦茶だったが、男にはそれら全てに心当たりがあった。
(どういうことだ?)
男はこの状況に眉を顰めた。
まるで自分のドキュメンタリー映像を、誰かに見せられているかのようだ。
やがて音声も聞こえてくる。
最初は複数人が同時に話しているような雑音のようでもあったが、時間が経つにつれ徐々にはっきりとしてきた。
「……を……けて……お願い」
声と同時に、懇願する女の顔も浮かんできた。
(これは……あの時の?)
だが思う間もなく、画面が瞬時に切り変わる。
音声がはっきりとしてくるにつれ、徐々にそのペースも遅くなってきていた。切り替わるまでの時間が長くなっている。
「……さん、これあげる」
幼い少女が笑顔で、自分に何かを渡してきた。
(これは? 確か)
男は手にしたソレを見詰めながら考える。
ピンク色の兎の形をした手作りの、小さなマスコット人形――。
澄んだ音色が耳元で聞こえてくるようだ。と同時に、その姿形もはっきりと輪郭を成してきた。
男は顔を上げて少女を改めて見ようとしたのだが、その瞬間に再び画面が変わる。
今度は若い男の顔だ。それに対して、自分が何かを話している声まで聞こえるようになってきた。
自分は一体どうしてしまったのか。
ここは何処なのか。今、どういう状況なのか。
それよりも、自分は今まで一体何をしていたのだろうか。
目まぐるしく移り変わる場面展開に男はこの状況を理解しようと、必死で記憶の糸を手繰り寄せた。
「……ごめんなさい」
男はその声に、ハッと顔を上げた。
「こんなこと、あなたにしか頼めなくて」
目の前にある小さなテーブルを隔てた先には、女の俯いた顔が見える。
「私からもお願いしたい。どうか、妻の頼みを」
その隣に座っていた男も、深々と頭を下げてきた。
「アキナ、それにハルヒトさんも。頭を上げてくれ」
その様子に困惑した男は、薄く無精髭の生えた頬をぽりぽりと掻いた。
「俺の娘のことでは……アキナ、あんたにはすごく世話になった。
あの時にあんなに親身になってくれて……今ではその娘もすっかり元気だ」
男は手を膝の上に下ろすと、女性を真っ直ぐに見据えた。
「だからできる限り、俺もあんた達には協力しよう」
(そうだ。あの時に俺は……)
徐々に記憶が蘇ってくるようだった。




