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うさぴょん号発進せよ  作者: 鈴代まお
第2章 解印
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第35話 生存者?

 それは一見すると、イタチのように見えた。

 細身の身体に金色の毛並み。小首を傾けたソレは愛らしい、つぶらな黒い瞳をしている。動いている、ということは生きた小動物なのだろうか。


「ナニ……コレ?」

『そいつはこっちが聞きたいぜ。……おい、船長』

 コウヅキは猫を掴むように首の付け根部分を持ったまま、船長に話し掛ける。それでも小動物は特に暴れもせず、大人しくしていた。


『ここに生物はいないって、あんた前に言ってたよな』

『うむ。確かに現在は滅びていて、生命体は存在しないはずでちよ。しょれが何か?』

『でも現にここにいるぜ。小さい動物のようだが、ちゃんと生きているヤツがな』

 さらっと言ったコウヅキの言葉に対して、船長は数秒間何も言わなかった。辺りの刻が止まっているかのようだ。

 が。


『!? なんでちって! ましゃかっ!!』

『そのまさか、さ』

『………』

 再び沈黙が訪れる。


『と、ともかく、そこから引き上げてきてくだしゃい。勿論、それも持ってきてほしいでち。話はしょれからでちよ』

 暫くして口を開いた船長は、明らかに狼狽えている様子である。

『わかった』

 コウヅキは会話を終わらすと小動物を持ち上げたまま、暫く無言で眺めていたのだが。

『トヲル、コイツはお前が持ってこいよ。いくら軽量でも生物は転送できねぇからな』

 ぽいっと、それを軽くトヲルの方へ投げたのである。

「え、え、えっ???」


 突然のことに慌ててしまい、受け損なう。小動物は、するっとトヲルの腕をすり抜けるとひらりと地面へ着地した。

『おいっ、ちゃんと受け取れよな!』

「そ、そんな~」


 それはそのままダッシュし遠くまで走っていったので、逃げるのかとも思ったのだが。しかしUターンしてトヲルの身体で螺旋を描くように上ってくると、ちょこんと右肩に乗ったのである。

「えっ、なんでっ!?」

『……お前、ソイツに懐かれてんじゃねぇのか?』






 二人はその場で、荷物を船に送る準備に取りかかった。準備といっても転送タグを袋に取り付けるだけの、実に簡単な作業である。


『船長、これからブツを転送するぜ』

『了解したでち』

 船長の返事が聞こえてくるとコウヅキはタグに座標番号を入力し、決定ボタンを押す。すると袋は一瞬で視界から消えた。船に転送されたのである。

 他の数体も同様に転送させてそれが全て完了すると、二人は最初に来た道を引き返すような形で帰路に就いた。


『とにかく、ソイツを逃がすんじゃねぇぞ。研究材料だからな』

 前を歩いていたコウヅキが振り返り、トヲルの肩に乗っている小動物を見ながら言った。

(研究材料?)

 トヲルは歩きながら改めて念押しをしたコウヅキの言葉に、多少引っ掛かりを覚えた。


『それにしてもコイツ、何処から出てきたんだ? 覚えてねぇのか?』

「うん、全く……」

 トヲルはコウヅキの後を歩きながら、ソレをちらっと見た。


『でもここで生きてるってことは、やっぱりこの星の生き物、だよな』

「この星って確か、地球の者は住めないんだっけ?」

『ああ。酸素濃度がかなり低いらしいからな』

(てことは、この星の最後の生き残り、とか?)


 小型船が置いてある場所へと到着した。小動物はずっと落ち着きなく辺りを見回していたのだが、トヲルの肩からは降りようともしなかった。

 コウヅキは船にエンジンをかけると浮上せずにその場で留まっていたのだが、やがて被っていたヘルメットを脱いだ。それを見たトヲルも同じように脱ぐ。


 船が静かに浮き上がったとき、肩に乗っていた小動物が突然トヲルの頭に移動した。その途端バチッという音がしたと思ったら、痺れるような感覚が全身を駆けめぐった。まるで感電でもしたかのようである。

 だがそれは、ほんの一瞬のことだった。


(今の……何??)

 トヲルが驚いて固まっていると、今度はコウヅキの頭に移動した。


 しかし直ぐにコウヅキはそれを掴むと、

「お前、ちゃんと見張ってろよな!」

 怒ったような口調でトヲルにそれを突き返してきた。

 同時に。


《我、其方の言語、組織構造を認識したぞよ》


 声が聞こえてくる。

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