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うさぴょん号発進せよ  作者: 鈴代まお
第2章 解印
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第29話 うさぴょん号、その名の由来?

 トヲルは昨日初めて会ったばかりの、ウサギの面をつけた社長の顔を思い浮かべた。


「あの社長、が?」

「うん」

「ていうかあの社長って、一体どういうヒトなの? なんか変なお面つけてるし。訳の分からない歌と映像も、バックに流れてくるし」

「トヲルも社長に会ったことあるんだね」

「昨日初めて、だけどね」

「でも、あたしもよく知らないんだ。きっと、みんなあの社長の顔、知らないんじゃないのかなぁ。お兄ちゃんなんか『得体の知れないヤツ』って、いつも言ってるよ」


 どうやらこの船員達にも素顔は隠しているようである。

 トヲルはここで、ふと思いついて聞いてみた。

「ひょっとして、この船の名前もあの社長が付けた……て、ことは?」

「うん。『うさぴょん号』って名前も社長なんだって」


(やっぱりだっ!)

 トヲルの推理(?)は当たった。

 以前からどことなくこれらのネーミングには、共通したものがあるような気がしていたのである。但し「どんな共通点か?」と聞かれても、うまく答えられる自信はなかったが。


「元々はこの船、船長のものだったでしょ? だから最初は船長が、別の名前を付けてたんだって。それを無理矢理変えたらしいよ」

「む、無理矢理?」

「ある日突然この船を『うさぴょん号』という名前に変えるって、社長が言い出したらしいの。で、その理由なんだけど『船長に一番ピッタリな名前を閃いた』から、だって。」

「それって……社長がその場で思いついたってこと?」

「うん、多分。船長はその時、最後まですごく嫌がったみたい」

(うう……なんかご愁傷様、としか言えないような)

 その時の光景が目に浮かぶようである。


「もしかして、それもコウヅキから聞いたの?」

「ううん、これは違うよ。これはお父さん、から……」

 そう言うとミレイユはトヲルから目線を逸らし、金網の向こうをじっと見詰めた。


「あ! ああ、ええっと……星、すごい綺麗だよねぇ」

 トヲルは寂しそうなミレイユの横顔から何となく気まずさを感じ、慌てて上を向く。

「え? うん」

 ミレイユも釣られて上を向いた。


 二人は暫くそのまま無言で満天の星空を眺めていたのだが、やがて。

「あの宇宙そらの何処かにお父さんが、いるのかな」

 ポツリ、とミレイユが呟いた。

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