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トランポリンと嘘

作者: 道草 きょうこ


 シャワーを浴びる。排水溝に長い髪の毛が詰まっている。どろどろしていて触りたくない。でも水がつまってきた。あたしのくるぶしまで汚い水がちいさなシャワー室に溜まる。


 でもめんどくさいからどかさない


 かわいいクマのぬいぐるみ、小さなラテックス。

 足がくさい油ぎったおとこのひと、新品のリボン柄のストッキング。ここがあたしの居場所。


 あさの十時。お仕事をはじめる。


 ひるの十二時、お客さんは来なかった。ペットボトルのお茶を買う。伊右衛門茶だった。


 ゆうがたの四時、革靴のおにいさんが来た。あたしに小便をかけて笑っていた。おにいさんが笑ってくれたからよかった。


 よるの六時、お友達のタイ人のおばあちゃんが来た。前はクラブでお仕事をしていて、どうしてここにいるの?と聞いたら

 「ここでは嘘をつかなくていいから、ここにいたいの」といった。

 彼氏がいるのに、彼氏がいないと嘘をつくのが嫌だと言っていた。

 あたしはほんのり嬉しくなって、やさしいおばあちゃんに優しくしたいと思った。


 よるの八時、男の人3人と1時間ずつ楽しんだ。

相手が笑ってくれたから私も楽しくなった。


 よるの十時、タイ人のおばあちゃんとお客さんを待ちながらテレビを見る。CMでトランポリン?でぴょんぴょん上下に動くふわふわした服を着た人をみた。

 「なんだかにこにこしてて楽そう。いいな。」

 「跳ねるのはたのしいかもね。」

 あたしたちはそれから何も話さなかった。

 

 おうちにかえっておじいちゃんとご飯を食べる。          

 「跳ねられるものはトランポリンなんだって。」

 おじいちゃんはあたしを灰皿で殴った。

 足から血が出た。

「血が飛んでる。トランポリンだ。」


 おじいちゃんはあたしのかばんからお金をとってタバコを買いに行く。置いてかないでと一緒に行く。

 通り道の赤い屋根の家から子どもたちの笑い声が聞こえる。

 そっと聞こえないふりをしておじいちゃんについていく。今日もへいわだ。


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