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 現在、念頭に置かれている選択肢は、彼が言う通り事実上その二つなのだ。

 ベローウッドが、隣に座る情報部門の責任者ハイデンベルグ卿に目で合図すると、ハイデンベルグ卿はその野太い指で手元のボタンを押して地下世界(アンダーグラウンド)の立体地図を空中投影した。


「……現在、第一七七民生委員会は『聖少女』を暗殺すべく盛んに行動を起こしております。三日前のここ、コマーシャル・プレイスでの人民内務委員会および我々の連合戦闘団との戦闘後も第五十四階層で地下政府軍相手に戦闘を行っております。戦域は徐々にですが確実に拡大していっておる状況です。しかも、この第一七七民生員会に対抗して敵対行動をとっている人民内務員会もこの行動に追随しておる状況で、未確認情報ですが、つい先ほど第六十階層において地下政府軍との間で小規模な戦闘があったとの情報があり、現在、情報部が全力を挙げて確認を行っておる所です」


「何度も聞いてしまって恐縮だがね、ハイデンベルグ卿。人民内務委員会の行動目的も本当に第一七七民生委員会と同じ、と断定してしまってよいのかね?」


「無論、求める目標は異なりますが、ただ、そのための通過点は共通しておるのです。人民内務員会は究極のところ、地下世界(アンダーグラウンド)における第一七七民生員会の持つ権益と影響力を全て傘下に収めたいということでありますから、そのためにはまず、地下世界(アンダーグラウンド)での自由な行動の権利を確保する必要がある訳でして、そのためには――」


「先んじて『聖少女』を暗殺して、第一七七民生委員会の機先を制したい――と?」


「まあ……」


 ハイデンベルグ卿は、重々しく頷いた。


「かの書記長の歓心を買うには、最も効果的な方法でしょうからな」


 とは言え――


「先ほども申し上げた通り、究極の目標が第一七七民生委員会の持つ権益の奪取ですから、人民内務委員会としては必ずしも『聖少女』を暗殺する必要もないでしょう」


「なぁるほど……。要するに第一七七民生委員会の地下世界(アンダーグラウンド)における主導権を奪えればいい訳ですわね。つまり、最悪、あの方たちは自分たちが暗殺できなくとも、第一七七民生委員会が暗殺するのを妨害できれば、第一七七民生委員会がそのメンツと書記長からの信頼を失いさえすればいいと……それが、次善の策ということですわね? ハイデンベルグ卿?」


「その通りです、マダム」


 ふーむ……。


「どうするかね、アレックス?」


「ふむ……果断なる決断こそがビジネスの要諦。ここで、足踏みを続けるのは愚策じゃろうて」


「そうですね。いつまでも時間を無駄にすることもできませんね」


「ああ。そろそろコインを選ぼうじゃないか」


「お返事を待たせすぎるのもお気の毒ですわ」


「情報部としても、方針が早く決まって下さった方が動きやすいですな」


 さぁ――

 一同の視線にベローウッドは、「ふむ」と頷いて手元のボタンを押すと、


「では、諸兄。決の準備を」


 ポケットから二枚のコインと取り出して、円卓の上に静かに置いた。

 一同も次々にベローウッドに倣って自身の目の前に二枚のコインを置く。



 賛意を示す『一ドゥカード金貨』。

 

 と


 反意を示す『一ポンド銀貨』。



 答えは、二つに一つ。

 会議室の扉が開いて外務を担当する六人委員会に対して内務を担当する四十人委員会、その委員長であるラム―ジオ卿が配下の二人の委員と主に黒い布を被せた皿を手に入って来る。

 ベローウッドが、静かに言った。


「これより決を採る。人民内務委員会の申し出を受けることに賛成の諸兄は『金貨』を反対の諸兄は『銀貨』を投じて頂きたい」


 そして……

 最初の投票者であるベローウッドの手が黒い布の下へと延び――


 ……チャリン


 コインの音が鳴った。


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