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 充填率の極限に達し、灼熱の恒星の如く煮えたぎる球状の高エネルギー体が、炎の尾を引きながらシャフトの底面へ向けて全ての空気を焼き尽くすかのような轟音を轟かせながら猛烈な勢いで落下していく。

 四十階層、五十階層……

 その勢いを増してゆく高エネルギー体。

 六十階層……七十階層――

 が、底面にそのまま直撃するかと思ったその時だった。

 オレンジ色に輝く高エネルギー体は底面一面を覆うように、ぱっ、と花が咲くかのように拡散し、

 次の瞬間――


『総員、何かに掴まれ!』


 底面一面が一瞬で炎に包まれ、突き上げるような猛烈な爆圧がエレベーターに襲い掛かった。


「――わぁぁっ!!!!」


 鳴り響くけたたましい警報音(アラーム)

 衝撃と共に宙へと投げ出された兵士たちが床を転がり、銃や水筒と言った装備が床と言わず壁と言わずエレベーターのあちこちに叩きつけられ、激しく音を立てる。

 ソコロフは、目の前のホログラム照準器を底面になおもセットし続けながら、空いている方の腕でペトロヴァの体を引き寄せ、力いっぱい足を踏ん張って手すりにしがみ付く。


(同志中尉!)


(俺に掴まってるんだ! 振り落されてくれるなよ!)


(は……ハイッ!)


 ペトロヴァが、ぎゅっ、とソコロフの体に抱き着く。

 なおも、警報音と共に大きく揺れ続けるエレベーター。

 そして、眼前では、シャフト全体をオレンジ色に染めて焼き尽くしていく破壊の炎。その真っ赤な舌で焼き尽くされた底面から生じた上昇気流が、苛烈なまでに熱を帯びた瓦礫や残骸を巻き上げながら空へ空へと吹き上がって行く。

 微かに聞こえる断末魔の絶叫と上昇気流自体が放つ咆哮。

 それは、まるで――


「魔女の鍋だ……」


 ソコロフが、ホログラム照準器越しにポツリと呟いた。

 地獄の業火を思わせるレベル四の量子転送兵器「メテオリート」。

 全てを焼き尽くし、全てを闇へと引きずり込む地獄の御使い。

 だが、それも、シャフトの底面から外壁を舐めるようにして炎が縁まで駆け上がり切ると、少しずつ、その勢いを衰えさせていき――

 そして――


(終わったか……)


 数秒の後、沈黙が辺りを支配する。

 焼けただれた外壁。

 噴き上がって来る風は、なお熱い熱気を孕んで、その焦げ臭い臭気が胸を衝く。塗りつぶされたかのような足元の闇の中にポツリ、ポツリと小さな炎が揺れていた。

 底面の敵は、完全に沈黙した。



『地上部隊各隊、射撃中止』


 

『エレベーター各隊は、被害を報告!! まだ、終わった訳じゃないぞ! 気を抜くな!』


(初めて見ました……同志中尉……)


(あまりいいものではなかっただろう?)


(え……?)


(君の親父さんは……ペトロフ軍曹は、量子転送兵器を嫌っていたよ。強力すぎて卑怯だ、と言ってね)


 ソコロフは、『ラトニク』の射撃モードを解除すると戦闘モードへ戻す。

 戦闘は終わってはいないとは言え、もう、これまでのような激しい抵抗はないだろう。

 そう。

 闇の中に沈んでこそいるから見えないが、底面はひどい状態になっている筈だ。

 それこそ――

 と、その時だった。

 ソコロフの脳裏に何かが閃く。

 目の前の底面で青い光が「チカッ!」と小さく瞬いた。


(――――クソっ!!)


 ソコロフは、背後の兵士たちへ向けて叫ぶ。


「総員、何かに掴まれ!!」


 ソコロフが叫んだ刹那の瞬間、




 轟っ!!!!



 

 轟音とともに敵の量子転送兵器の攻撃がソコロフとペトロヴァの乗るエレベーターを直撃した。



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